シナリオ著者名及びサークル名:永久パピルス
出典元:イブ・ツトゥルの景象
舞台は1982年、香港。街では最近、謎めいた殺人事件が噂になっていた。
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これからシナリオをプレイされたい方
ネタバレなのでご覧になりませんように
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キャラクター紹介
PL 姉 : 龍汪 煌(りゅうおう こう)
PL姉:紫花 璃羽(しが りう)
KPL妹:一诺 (イーヌオ)
本編
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00.キャラクター紹介(シナリオには無いシーン)
一诺という人間
一诺は家族の陰謀と野望の渦に飲み込まれていた。彼の親は冷酷で強欲なマフィアのボスであり、一诺は将来的にその父の後を継ぐことが決まっていた。しかし一诺は父の非情なやり方に反発し、ある日とうとう我慢の限界を迎える。父との激しい口論は家族の枠を超え、組織内での権力争いへと発展した。夜の闇に包まれた裏通りで、一诺は父と向かい合う。親子の対立が血塗られた土地で頂点に達した瞬間、父は冷酷な微笑みを浮かべながら、一诺に異例の決断を下す。「ならば、お前のやり方でやってみるといい。そのやり方では、何もまとめられないだろう。失敗すれば地面に穴をあけ放り込んでやる」
一诺は父との対立から組織内で最も低い地位に転落した。当然ながら、待っていたのは仲間たちからの冷たい視線だ。裏切りと陰謀の渦中で、彼は心身ともに試練に立ち向かわねばならなかった。しかし、一诺は力を使うことは無かった。彼は情報収集と分析に優れ、組織内外の情報網を駆使し敵対者の弱点を見抜いた。
そして心理戦術を用い、相手の期待値を操り、言葉巧みに誘導することで、交渉の主導権を握った。妥協と利害調整においては柔軟な姿勢を持ちながらも自らの立場を守り、相手にも受け入れやすい提案を提示。公正性を保ちつつ有利な条件を引き出していった。脅しではなく優れた提案を通じて相手に受け入れやすい状況を作り出し、組織内の対立を解消。一诺は知恵と交渉力を武器にして、マフィアの支配層に上り詰めた。組織は安定し、一诺の名声は更に高まり、父をも凌駕する存在となる。組織は一新され、一诺の支配下におかれた。彼は自らの信念を貫き通すことで、新たなマフィアの王として君臨するのだった。
*
洗練された夜のイベントに、一诺は冷静な表情で姿を現した。彼の存在は会場に優雅で静かな緊張感をもたらした。
「一诺さん、この会場にいる皆があなたに感謝しています。……ところで、どのような女性が好みなんですか?」
女性は笑顔で彼に近づいた。柔らかな声で言った言葉は、組織への感謝の裏に隠された陰謀を秘めている。一诺は微笑みながら頭を下げ、感謝の意を表すと同時に、彼女の美しさに隠された意図を見逃さなかった。彼は裏切りと陰謀の渦中で生きてきたため、人の仕草や表情から性格や考えを読み取ることが得意だったのだ。
「今まで好みの女性と出会ったことは無いな」と、彼は静かに続ける。
冷静に相手を迎え入れながらも、感情に流されることはなかった。
組織への信念が彼を導き、彼の姿勢は他者からの尊重と信頼を勝ち得る要因となっていた。龍汪と一诺の出会い
自分は普通の人間とは違う、そのことに気付いたのは何時の日だったか。
周りの人間は自分より早く年を取るし、怪我や病で簡単に死んでしまう。
だから助けなければいけない。守らなければいけない。特殊な角だからか、命を狙われることも多々あったが、出来るだけ武力に頼らず、相手に語り掛けた。言葉ではどうにもならないこともあったが、そんなある日、一人の男性と出会う。彼は一诺と名乗り、マフィアの長なのに武力よりも言葉を選ぶ人だった。
「龍汪の持つ力は特別だ。だが、それが君を傷つけることもある。
俺は武力を振るうことよりも、別な方法があると信じている。
お互いを理解し合い、助け合うことが大切だ」と、一诺は語った。彼は対等な目線で自分と話す。初めて友として龍人の身のことを心配し、守ろうとする人だった。
あとどれくらい、彼と過ごせるのだろう。
紫花 璃羽という人間
小さい頃から、彼女は「神童」と呼ばれていた。その果てしない知識欲から得られた能力は周りから求められた。大人になれば国で一番大きい病院の医師として働いて、両親も妹も周りの人皆が喜んでくれる。多くの人を助けた。でも国で大切と呼ばれる人、一人の病を治せなかった。期待に応えるのは難しいのに、失望させるのは一瞬だ。曲がり角から声が聞こえてくる。
「あんな凄い人殺しちゃって、人殺しの家族と言われちゃうわよ……」
ストレスや過度な緊張から来る、心にもない言葉だと言うことは分かっている。
それでも、皆が欲しているのは私ではなく、私から与えられる恩恵だと思うには十分だった。「別に良いよ。お姉ちゃんのこと知らない人が勝手に言ってるだけじゃん」
「治すのは当たり前なのに、失敗したら責めるの?」それでも、妹だけは違う。こんな私のことを愛してくれる。
*
人からは不愛想と言われるが、他者と関わって得られる喜びなど、人生を豊かにする知識に比べたらなんて粗末なものなんだろう。
「お姉ちゃん。そんなに勉強していたら風邪ひいちゃうよ」
「大丈夫よ、あと少ししたら眠るわ」妹の咳、吐血。私が唯一治せなかった病。
あぁ、どれだけ知れば、この病を治せるのだろう。大昔の逸話で、龍の角は同じ症状を治したことがあるらしい。「行ってきます」
御金だけは沢山あったので病院を辞めて、そのまま旅に出た。
01.導入
1982年6月の香港、弥敦道(ネイザンロード)の喧噪から一歩踏み込み、少し裏通りへ入ると、小さな料理店『陽光酒家』が広がっていた。
夕陽が街を包み込むなか、夕食のシーンから物語は幕を開ける。探索者は香港の住人であったり、長期滞在するビジネスマンやバックパッカーであっても構わない。
香ばしい油の香りが漂う店内に足を踏み入れ、奥の席ではランニングシャツを着た中年男性が、脂っこそうな野菜炒めをつまみながら青島ビールを楽しんでいた。一诺 (イーヌオ)「このお店、味がしっかりしてて美味しいね」
龍汪 煌(りゅうおう こう)「良い油を使っているのかもな」二人の男性が食事をしていると、一人の女性がすぐ隣のテーブルで食事をしていた。
一诺 「そんなことより、煌」
一诺 「僕は今、運命の相手に出逢ってしまったのかも知れない」
一诺 「あそこの席にいる女性、麗しいと思わない?」そう言うと、イーヌオは隣席の女性に目配せをする。
龍汪 「一诺 、食事の邪魔をしてはいけないよ」
一诺 「でも彼女も僕を求めてるかも知れないよ」
龍汪 「確かに、人生どうなるか分からないし僕が止めるのも……」
一诺 「ねぇ、お嬢さん。君はどこから来たの」紫花 璃羽(しが りう)「・・・」
一诺 「ごめん、ごめん。名乗ってなかったね。僕はイーヌオ。中国出身なんだ」
一诺 「この間、日本に行ったときは「犬男(イーヌオ=いぬお)」って仲間に笑われたよ」
璃羽 「……何か用でした?」
一诺 「無理強いはしないんだけど、一緒に食事でもどうかなって」
一诺 「珍しく同じ髪色だったから、縁を感じてね」夕食を求めて『陽光酒家』に足を運んだ探索者が、一人の警官と偶然相席することになる。その警官、黄と名乗る男性は、雨の日にのみ発生するという謎めいた事件、『雨夜屠夫(ユイエートーフー)』の追跡者であった。
黄 「すまないが、向かいに座らせて貰うよ」
一诺 「どうぞどうぞ」
龍汪 「構いませんよ。その制服、先ほどまでお勤めでしたか」
黄 「あぁ、そうなんだ。赤い着物をした方、角が美しいですね。役者の方ですか」
龍汪 「いえ、これは産まれた時から生えていたものです」
黄 「そういえば、角を生やした人間もいると聞いたことがあるな」その瞬間。先ほどの女性の目の色が変わる。
璃羽 「耳の形、瞳の色。……龍人族の角は万病の薬になる」
黄 「というと、人間ではなく龍人なのか。たしかに尻尾も作り物にしてはリアルだ」いつの間にか璃羽は一诺の隣に座り、龍汪の角を値踏みするかのように見ている。
一诺 「そしたら各々自己紹介でもする? 話せること、話せないことはあるだろうけど、言えることに限ってさ」
一诺 「俺は一诺 、中国出身で年は26。職業はヒミツ♪ 呼び捨てでいいからね」
璃羽 「私の名は紫花 璃羽(しが りう)博士(はくし)をしている」
一诺 「どうりで知的で神秘的な雰囲気なわけだ」
璃羽 「犬男は女性を褒めずにはいられないみたいね」
一诺 「実はこんなことは初めてなんだ。だから君だけ」璃羽は表情に出ないが、機嫌悪そうに目を逸らした。
龍汪 「僕は龍汪 煌(りゅうおう こう)職業というわけではないけど、あえて言えば武術僧なのかな……。雇われて護衛をしたり、けが人を治したり、悪い人と戦ったりしてる」
璃羽 「本では知っていたけど龍人族を初めてこの目で見た。その角を研究させて欲しい」
龍汪 「角には神経が通ってるからすぐには渡せないけど、多くを救えるならそれでいいよ」イーヌオは唇が動かぬよう、煌に小さく話す。このざわざわとしか店では煌にしか聞こえないだろう。
一诺 『優しすぎるぞ煌。俺が言うのもなんだけど、まだ彼女を信頼出来るわけではないだろう』
龍汪 『信頼出来なければその時はその時さ。多くの民が救われるならその方が良いだろうと思っただけで』
一诺 『そもそも龍の角なんて、通常のルートでは流通できない希少価値の高いものを取引すること自体危険だ。受け取った彼女も危険な目に合うかも知れない』
一诺 『その角は作り物だと思われたり、武術の達人である煌が持っていた方が良い』龍汪 『一诺らしいな、俺は人を信じやすいから助かるよ』
一诺 『それに煌が人のため良いと思っても、生まれ持ったものを人に渡すのは臓器を与えるようなものだ。煌の身に何か影響がないとも言いきれない』璃羽 「……まだ信用に足りないと分かっている。もちろん今後の動きを見てからで構わない。今は科学が進んでいるし、角を失わずとも研究は出来る」
一诺 「なるほどね、じゃあこれからの動きを見て煌が決めたら良い」
一诺 (俺たちの会話を聞き取ったのか……? それとも、様子を見て俺たちの考えを察したのか。どちらにせよ増々面白い女性だ)龍汪 「其方の方は警官でしたか」
黄 「あぁ警官をしている。黄建根。黄と呼んでくれ。年はイーヌオと同じ26歳で中国出身」
黄 「君たちは職業も出身もバラバラな様だから、俺が追っている雨の夜に女性が襲われる事件について聞きたい。良いか」
龍汪 「雨の夜に? それは物騒ですね。構いませんよ」
黄 「今年に入ってから3件もその事件が起きているんだ。被害者は襲われてから数日後にバラバラの死体として見つかっている。事件の形跡から同一犯によるものだと思われる。ただ、彼女たちのいくつかの部位は未だに見つかっていないんだ」黄は手にしていた古い本のページを千切り、一枚ずつを探索者に手渡す。
黄 「この本は……」
しかし、口を開こうとした瞬間、彼は突然驚いたような表情を浮かべ、店の外を見つめたかと思うと、そのまま誰かを追いかけるかのように店を飛び出し走り去ってしまう。
探索者の前には、一枚の紙片だけが残された。その紙片には『鬼蚺的啟示錄(グィランデ・チシル)』Ⅰ巻の破れたページが描かれていた。紙片から漂う薄汚れた香りが、探索者を取り巻く。その内容に触れることで未知の秘密が明らかになるだろう。
しかし、この知識を得る代償として、正気度ポイントを喪失する可能性が潜んでいる。それだけでなく、クトゥルフ神話に対する理解が深まる一方で、研究には時間がかかる。
龍汪 「黄さん何も食べてないな…! すぐ戻る…!」
一诺 「もう追いつけないよ。それに犯人らしき人を見かけたんじゃないかな」一诺は煌の袖を掴み、引き留める。
龍汪 「既にいなかった……」
一诺 「煌、機会があったら探そう」
璃羽 (1枚ずつ手渡した……聞きまわっていたら無くなってしまうだろう)
璃羽 (本の古さから複数あるとは思えないし、見ず知らずの人間に渡すほど価値が無い情報とも思えない。犬男と龍汪さんに何かある?)璃羽 「この世界の信じられている理から外れているけれど、何かに使えそう……どうしてこんなものを」
一诺 「この本の内容、禍々しいな。呪文が載っているようだが、俺が覚えられそうなのはセクメンケネップの言葉か」
一诺 (……もともと人を操るのが得意だから不要だな)
一诺 「黄は何を伝えたかったのかね」
璃羽 「事件と関連した情報ということは、事件を追う場合に必要となる可能性がありそうね」次のシーンまでは1週間が経過する。この時間を利用して探索者は紙片を研究することができる。研究が終わった時点で、判定なしに紙片に書かれた呪文を習得可能。
再び『陽光酒家』を訪れた探索者は、他の探索者と「偶然」出会い、再び相席することになった。
黄は隣にはいないものの、不気味なほど前回の光景と同じである。香ばしい油の匂いが漂い、奥の席に座るランニングシャツの中年男性も、脂っこそうな野菜炒めを楽しみながら青島ビールを飲んでいる。璃羽は不審な点が無いか外の景色を確認したところ、不思議なまでに前回と同じ光景だった。違うのは黄がいないこと。そして今からやってくる警官だけだ。店の主人とやりとりをしていた男は、探索者の席に歩み寄ってくる。
彼は黄の同僚で、黄が消息不明になってしまったことから、些細なことでも黄に関する情報を提供してほしいと懇願してきた。
龍汪 「黄さん……」
龍汪 「俺が追い付いていれば」
一诺 「急だったから、誰も追いつけないさ」
警官 「黄は一週間前に捜査に出ると言って、そこから音沙汰がないんだ。最後に黄が見かけられたのは、アイツが好んで訪れるこの『陽光酒家』で、君と相席してたって話だ」
龍汪 「あの日は今日のように満席で相席して頂いたんですよ」黄の姿がこの料理の香りとともに浮かんでくる。警官は続ける。
警官 「そうだったのか。……黄は責任感が強い男だ。独りで犯人を追っている可能性もある」
璃羽 「一人で調査するのは責任感が強いとは言えない」
警官 「雨夜屠夫を見つけたと連絡が入ったきり、通信は途絶えてしまったんだ」警官 「黄の様子に不自然な点はなかったか? 行先に心当たりはないか」
璃羽 「ある事件を追っていると言っていた。貴方も?」
警官 「あぁ、警官はみな「雨夜屠夫」を追っているね」
龍汪 「雨夜屠夫ですか」璃羽 「鬼蚺的啟示錄は知っている?」
警官 「知らないなぁ」
警官 「君達は、黄を探すのに向いてそうだね」
警官 「ぜひ君達に頼みたい。もちろん報酬も用意してある」依頼の謝礼は前金としてHK$3,500(当時のレートで、3,500香港ドル≒14万円)
さらに、彼を連れて帰ればHK$5,000(同じく20万円)が支払われるという。璃羽 (素人に? それに女性が狙われると言っていた。囮には良いかもしれないけれど、彼を信用できる?)
警官 「ただし、この前金には必要経費等が全て含まれている」警官が注意を促す。
警官「それから黄探しは警察組織の公式な依頼じゃなく、同僚である俺個人からの頼みごとだ」
龍汪「黄さんは今頃一人で不安だろう……助けに行きます」
龍汪「同じ食卓を囲んだ中ですし」璃羽 CC<=95 【目星】 (1D100<=95) > 24 > ハード成功
<目星> 警官に狂気や怯えなどの怪しさは認められない。一般的な警察のようだ。一诺 CC<=80 【心理学】 (1D100<=80) > 51 > レギュラー成功
<心理学>探索者は黄を探すのに適任だと確信しているようだが、どうしてそのような確信に至ったかは彼自身もよく分かっていなさそうである。璃羽 (私は普段静かな場所で食事をするのが好き。それに同じタイミングで出会うことある? 私たちは何かに集められているの?)
警官 「ありがとう、助かるよ。こちらに地図があるから、参考にしてくれ」
龍汪 「はい」
一诺 「とりあえず情報を足で集めますかね」
龍汪 「店主さんすみません、黄さんという茶髪の警察官について何か知ってますか」
店長 「あぁーここの常連だよ。HK$50くらいで料理を頼んでくれたら、もう少し話すかもなぁ」HK$50 出せば、探索者が十分満足できるほど飲み食いできるはずだ。
店長 「こちらも商売なんでね~、まぁそこの白髪が結構注文してるから教えてやるか。出入りの点心業者が九龍城砦に点心工場を持っていてね、九龍城砦の中で黄を何度か見かけたことがあるらしいぞ」
龍汪 「そうですか、情報ありがとうございます」
一诺 「従業員さんは何か知ってます」
店員 「黄さんの行方? 知らないわね。でも彼、最近女性へのプレゼントで悩んでたわ。私は花を贈るのが良いんじゃないとアドバイスしたの」
龍汪 (時系列は分からないが、あれだけ熱心に追っていたのは、その女性のためでもあったのかもしれないな)陽光酒家での情報収集を終えた探索者達は、さらに黄の行方を追うため以下の方法で調査を行なうことができる。
①警署(日本でいう警察署)
②黄の自宅警署(日本でいう警察署)に向かうと、黄のデスクから捜査文書を見つけることが出来た。
文書によると、雨夜屠夫と呼ばれる凶悪な犯罪者の背後には、イギリスのカルト団体が香港での犯行を支援している形跡が文書に詳細に記されている。
この団体は香港に不法入国している可能性が高い。しかし、その入国ルートについてはいくら探しても手掛かりが得られなかったと書かれていた。一诺 「雨夜屠夫の犯行に、イギリスのカルト団体が支援してるようだね」
龍汪 「イギリスのカルト団体か……入国ルートの手がかりが得られないというのは中々不思議だな」
龍汪 「あの古い本には色んな内容が含まれていた。そんな不思議な呪文があるのかな?」一诺 「たしかに、それはありえそうだね。秘密裏に船や飛行機を使ったり、人を買収しても見つかるのは時間の問題だ」
璃羽 「もしそんなことがあったとしたら手に負えない内容だと思う」
龍汪 「壊滅は出来ないとしても、黄さんを逃がすことはきっと出来るかもじれない、一诺もいるし」璃羽 (……他人だと言うのに熱心に探しているのは何故?)
璃羽 (龍汪さんはとんだお人好しだとしても、犬男は……)璃羽 「……あのお店に集められ、良く分からない事件を素人に追わせている。不可解に思うのは十分だと思うけれど、貴方たちは何を目的に動いているの」
三人は場所を移動しながら会話を続ける。
龍汪 「黄さんが危ないから助けるのは勿論だけど、雨夜屠夫の事件が解決しなければ、璃羽さんも女性もずっと危険なわけだし、バラバラにされてしまった遺体も、失われた身体が回収されてないとご親族も報われないだろう」
龍汪 「黄さんの捜査文書からイギリスのカルト団体とあったし、国の存亡に関わっているかもしれないと思うと、出来ることはしたいかな」
一诺 「雨夜屠夫の事件まで解決しようとしてるとは流石だな」
龍汪 「多くの民を救いたい璃羽さんも同じ意見だと思っていたけど?」
璃羽 「私は貴方たちの信頼を得て角の研究をしたいだけ」
一诺 「俺は依頼を受けた上でお金を貰ってるから、仕事かな」
璃羽(命の危険があったとしてもこの仕事を受けるのは、相当の手練れか、別に思惑があるの?)璃羽 「……この先長くなりそうだから、ハッキリ言う。私は犬男を信頼できずにいる」
一诺 「そう? 煌は信頼出来るけど、俺は出来ないってわけだ。それは何故?」
璃羽 「龍汪は分かりやすい。角の研究であれば普通身構えるけれど、周りを尊重していた。そして危険を顧みず黄を追ったり、現在も首突っ込んだりと一環としている」
璃羽 「……でも犬男は良く分からない」
一诺 「何か隠し事がありそうってことかな?」
璃羽 「あら、察しが良いのね」
一诺 「まぁ、これから信頼して貰いたいから包み隠さず言うと、マフィアのボスなんだよね。だから璃羽の方が察しは良いよ」
璃羽 (それで人当たりの良さとは反するオーラだったというわけ……ということは手練れだから受けたという所かしら)
龍汪 「マフィアといっても一诺 は良いマフィアだ」黄の自宅は、静寂な雰囲気に包まれていた。探索者は慎重に彼の部屋を調べ、机の引き出しから黄の日記を見つけた。
その中には、黄が一月前にバラバラ殺人犯「雨夜屠夫(ユイエートーフー)」と遭遇した記述があった。日記を読み進めるうちに、黄は「雨夜屠夫」の手にあった古い書物を奪い取ることには成功したものの、逃げられてしまったようだ。
次に一枚のメモが見つかる。書かれたメモには、単語の羅列があった。これは情報の断片であり、探索者はこれを解読することで新たな手がかりを手に入れる。龍汪 「上3つの単語、陽光酒家、協力者、相席とあるけど、店名の指定まであって、相席とある。黄さんはあのお店で協力者を探したい理由があったのかな」
璃羽 「そのまま読むと上の3つは実際に起こったこと。下は雨降る夜の殺人鬼、素直に読むと蝴蝶谷は関係する場所かしら」
一诺 「たしかにそう考えると繋がるな」
璃羽 「私たちは協力者として、大事な紙を渡したというならば辻褄もあう」
一诺 「情報集めはこんなところか」02.市警の思惑
香港の夜は冷たく静かだった。探索者が黄を追っている裏で、皇家香港警察(Royal Hong Kong Police)の本部ビルでは警察幹部とイギリス外務省の官僚が緊迫した雰囲気の中で集まっていた。香港はその時、まだイギリスの統治下にあり、警察の上層部の大半はイギリス人で占められていた。会議室では、"雨夜屠夫"の事件に関する深刻な討議が行われていた。イギリスのカルト団体が絡んでいるとの情報が浮上し、香港の租借期限を巡るマーガレット・サッチャー首相と鄧小平の英中対談が迫っている中で、この情報が漏れればイギリスにとって不利になる可能性は高かった。我々はイギリスの名誉を守りながら、事件の解決を急がねばならない」と、冷静な声でイギリス外交官が語った。会議室内では、警察上層部と外交官たちの冷や汗が額に浮かび、緊迫感が漂っていた。彼らは慎重かつ巧妙な戦略を練り、情報を隠しつつ事件を解決し、香港の平穏を保つべく奮闘していた。この厳しい舞台裏で、香港の未来が揺れ動いていた。
03.九龍城砦にて
香港の闇に包まれた特異な場所、九龍城砦(ガウロンジャイセン)。
ここは歴史的な背景からくる行政の手が及ばない場所で、特殊な雰囲気に包まれている。約3万人以上が住んでいると噂されているが、その詳細な数は謎に包まれたままだ。狭い敷地に、100メートル×200メートルのエリアに、まるで詰め込まれたペンシルビルが立ち並んでいた。外壁や階段、渡り廊下を共有し、まるで合体したような構造をなしているかのようだった。ビル同士が一体となり、一つの大きな生命体のように見える。街路はコンクリートで舗装されており、わずか1メートルほどしかない。14階建てのビルに挟まれ、上部は渡り廊下やベランダで覆われ、光が届かない真っ暗な通路となっていた。
狭い空間に押し込められた街路は、薄暗く湿気に満ち、上からは時折汚水が滴り落ちてくることもあった。奥へ進むほど、暗黒の中に座り込む麻薬中毒者たちが無言で佇んでいる様子が見受けられる。この港の中で、彼らは生きるために、または逃げるためにここに身を潜めているのだろう。九龍城砦のメインストリート。この地で住民たちから情報を引き出すのは容易ではない。ここに住む人々は余所者に対して協力的ではなく、話を聞くには<信用>のロールに成功するか、ある程度の金銭(HK$10 ~ HK$50 ほどが適切だろう)を支払う必要がある。
龍汪 「聞き込みしていくかな」 CC<=50 【信用】 (1D100<=50) > 15 > ハード成功
璃羽 「私も聞いてみる」 CC<=70 【信用】 (1D100<=70) > 6 > イクストリーム成功煌の神へ遣えたような雰囲気、璃羽の美しさに麻薬中毒者は答えた。
麻薬中毒者「ああ、よく見かけたよ。光明路に入り浸っていた。光明路は陰惨な場所さ。その名に反して昼でも夜でも日中の光が差し込むことはない。いつでも闇が支配してる。アヘンの匂いは立ち込め、売春婦たちの呼び込み声が響く」
しかし、一般の住民は、なるべく犯罪に巻き込まれぬよう生活しているため、これ以上の情報を知らない。
もっと詳しい情報を得るには、光明路での聞き込みが不可欠だろう。一诺 「次に向かう光明路は売春宿のような場所らしいな」
龍汪 「薬に耐性あるかな、マスクなど必要だろうか」
一诺 「一般客が入るくらいなら大丈夫じゃないか?」龍汪 「璃羽さんは危険だから僕と一诺の間に居ると良いよ」
龍汪 「光明路は闇が支配しているということは、武力行使などあるかもしれないからね」
一诺 「ただ、ああいう場所に娼婦以外の女性は禁制らしい」璃羽 「娼婦として潜入が必要なのかしら」
一诺 「……、俺が璃羽といるよ。 煌に探索を任せていいか」
龍汪 「分かった、行ってくる」
龍汪 「犯罪組織と対する可能性があるなら、闇の場所なら武器も手に入りそうだな」光明路に足を踏み入れると、そこかしこに娼婦たちが群がっていた。男性探索者であれば、その勧誘に巻き込まれることもあるだろう。
娼婦 「お兄さん、心温まる時間を過ごさなァい?」
妖艶な微笑みと共に、彼女は手招きするように身体を動かす。探索者が黄に関する質問をすれば、娼婦たちは嫌そうな表情を浮かべるだろう。
客でもない相手には付き合う気はないらしい。しかし、HK$300を支払って客になるか、情報のためにHK$50を支払うと、情報を提供してくれる。龍汪 「すみません、黄について教えてもらえますか」
龍汪 「チャリン」
娼婦 「あら、情報だけ? 残念、ふふふ。三合会の一つ14K(サップセイケイ)が囲っている娼婦たちに、最近変な警官が出没してるって。一週間前にも来てたんだよ。その娼婦たちがいる売春宿は、光明路の中心あたり、奥まった場所にあるわ。行くなら気をつけてね、いろいろと危ないこともあるから」
龍汪 「ありがとう」探索者は話に聞いた場所へ足を運ぶと、そこで迎えてくれたのは筋肉質な若い男だった。
男は探索者が黄を捜していることを知ると、店では贔屓の情報を管理してないと言いながらも、個別に話を聞いてみることを提案した。男 「おい、黄って奴を探してるんだろ? それなら娼婦一人ひとりに聞いてみるといい。本人じゃなくても、何かしらの手がかりは知ってるだろう」
話を聞くためには、話しかけたい女性にHK$500を支払い、客となる必要がある。男はさらに、以下の違法な武器を買うこともできる旨を伝えた。
違法な武器のリスト
・32 口径オートマチック拳銃 HK$2,000
・25 口径デリンジャー拳銃 HK$800龍汪 「HK$3,450持っているから、情報で2950、オートマチック拳銃で950、デリンジャー銃で150が残るな」
龍汪 「チャリン」
男 「おっと気前が良いねぇ、では女も一人選んでくれ」A:二十代前半、黒髪で色白な娘(APP:15)
B:十代半ば、黒髪で色黒な娘(APP:13)
C:二十代後半、焦茶色の髪で色白な娘(APP:14)
D:十代半ば、焦茶色の髪で色白な娘(APP:15)男 「どの娘もなかなかなもんだよ」
龍汪 「誰が情報を良く知っているだろうか」
龍汪 「すみません、黄さんについてよくご存じな方は何方ですか」
男 「……まぁ金を払ってくれた気前の良いお客さんだからな。そもそも情報だけ欲しいと見える。違うか?」
龍汪 「はい、情報を集めに来ました」
男 「それなら、特別に教えてやろう」店主は不敵な笑みを浮かべ、奥から雪のように白い肌を持つ少女――陀螺(トーロゥ)を呼び寄せた。
男 「こいつ、陀螺(トーロゥ)ってやつだ。お前達が知りたい黄の贔屓な子はこの娘だ。人気者でな、普段の客にはあんまり相手をさせないんだが、お前なら特別にちょっとだけ追加で金を払ってくれれば買わせてやろう」
男 「HK$50で良い」
龍汪 「良かった、それならお願いします」
龍汪 「金使いで一诺に怒られそうだな」探索者が陀螺を買うと、彼女はゆっくりとした、そしてどこかギクシャクした動きで探索者を奥へ案内していく。
蒋雪儿-莫问归期『怎奈何无人了解我心思』【动态歌词】 - YouTube
夜の街角、古びた建物の中で、陀螺(トーロゥ)の存在は不思議な魅力を放っていた。
小さな部屋に案内され、そこには寂しいくらいにベッドと小さな棚しかなかった。
質素なドレスを着た陀螺は、ベッドに腰掛ける。小さな花瓶に飾られたヒマワリが、部屋に微かな温かさを与えていた。龍汪 「僕は龍汪。頼まれごとをしてね、黄さんを探しているんだ」
陀螺 (トーロゥ)「知ってるよ。貴方の名前。」陀螺は微笑みながら「遠い昔に会ったことがあるから」と話す。もちろん、その出会いについての記憶は探索者にはない。
陀螺 「黄さんの場所を知りたいんだよね。その代わり、今度あったときに何か贈り物が欲しいな。何でも良いから……」
彼女は答える対価としてプレゼントをねだる。内容は特に指定されていないが、次に会うまでに用意しておくことが良いとのことだった。
龍汪 「そうなんだ。じゃあ折角出会えたからこの胸についたブローチをあげるよ」
龍汪 「瞳にあうからイヤリングの方が良いかな」
陀螺 「ありがとう……でも……」
陀螺 (龍汪からのプレゼント欲しいけど、今貰ったらもう会いに来てくれないかも知れない)」トーロゥは口ごもる。次に会う約束を取り付ける口実だったようだ。
龍汪 (そうか、花をプレゼントすると言っていた。黄さんが渡したのはこの女性だったのかな)
陀螺 「次に会う時でいいの」
龍汪 (物が無く寂しい場所だったから、愛情が欲しいのだと思ったけれど違ったみたいだ)陀螺 「黄はね、私を買うためにやって来た。でも目的は抱くことではなく、私の独楽(こま)占いを求めてよ」
龍汪 「良く当たるんだね」
陀螺 「えぇ、貴方もやっていく?」
陀螺 「夢占いには「夢の薬」が必要で、普段はHK$600を貰ってるの」
龍汪 「何か次の道が示されるかもしれないな」龍汪 「この部屋に黄さんが来ていた…か」
CC<=85 【目星】 (1D100<=85) > 23 > ハード成功
目星成功→目ざとい探索者はゴムバンドと注射器が棚に置かれていることに気付くかもしれない。
その視線に気づいたトーロゥが「それが夢の薬。注射器とゴムバンドがセットにってるの。九龍城の麻薬中毒者から購入できるわ。価格は一回分(人数は問わない)でHK$600」と説明する。陀螺 「でも初回だから今回は無料にしてあげるね」
陀螺は自らの左腕に夢の薬を打ち、探索者にも同様に投与することになる。
それから、陀螺は赤い小さな箱から日本の独楽(こま)を取り出した。
陀螺が回す独楽は次第に、マントを羽織った怪物の姿に変わり、周囲に不思議な映像を映し出す。見たこともない村で探索者と陀螺が追手から逃走する光景。
夕日が差すビルの屋上で空に向かって両手を掲げる影。
―これらの幻覚は、探索者に1/1D10正気度ポイントの喪失をもたらすのだった。04.雨の降る夜に
女性探索者が男性探索者と別れて移動した頃、空は暗雲で覆われ、日が沈む頃には雨が降り始めた。
彼女は周りを見回すも、雨宿りできる場所は見当たらない。途方に暮れながら歩いていると、唯一の救いとなるべきものが現れた。
ひときわ洗練された車体を持つタクシーが、まるで彼女の困難を感じ取ったかのように、静かに近づいてきた。一诺 「すっかり暗くなってきたね」
璃羽 「ええ。雨……雨夜屠夫には丁度良さそう」
一诺 「たしかに雨夜屠夫を探すにも打ってつけだ」
璃羽 「蝴蝶谷に向かった方が良いのかしら」そんなことを話していると雨粒が舞い散る中、タクシーが彼女の前で順調に停車し、その車を運転しているドライバーは手を振った。
窓が開かれると、そこには温かな車内から覗く運転手が迎えてくれた。璃羽 (この事件に関わってからというもの、全てが怪しく感じる)
運転手「どこかへ行きましょうか」運転手は親しげに声をかけた。
璃羽 「一応、私達は龍汪さんを待っているのよね」
一诺 「そうだね。もう少し帰ってくるのを待つか」
運転手「本当に乗らない? それなら他に雨で困っている女性がいるかも知れないから、僕は行くよ」
璃羽 (女性限定にしているということは何かを知って良そう)
璃羽 「貴方、黄さんか雨夜屠夫について何か知ってる」運転手「雨夜屠夫ねぇ、なんでも彼は死体の一部を保存したり、死体の映像を写真やビデオカメラで撮影してるとか。まるで悪夢のような話だよな」
璃羽 「そう、ありがとう」
運転手「なんでそんなことを知っているか……」
璃羽 (ここの人間は多くの情報を知っていると思ったけれど、そもそも関係していたということ?)運転手はニヤついて笑うと、璃羽は自分の身体がまるで動かず、言葉すら発することができないことに気づくだろう。
雨夜屠夫 (ユイエートーフー)「俺が雨夜屠夫。君の心は既に私のものだ。逃げることはできない」
運転手は静かに微笑んで、真実を明かした瞬間、探索者の心はますます深い闇に引き込まれていくのを感じた。
璃羽 (犯人がこんな堂々と歩いてるなんて……)
一诺 「璃羽? 大丈夫か……ッ」様子がおかしい璃羽に声を掛けようとした瞬間にタクシーの扉が開き、雨夜屠夫が璃羽を車の中へ入れこもうとする。一诺は璃羽の腕を掴みながら、身体を扉へねじ込み閉まらないようにする。
璃羽 (ちぎ……れる!)
一诺 CC<=25 【STR対抗】 (1D100<=25) > 10 > ハード成功
イーヌオが璃羽を引っ張り出すと、雨夜屠夫が舌打ちをする。
雨夜屠夫 「せっかく上玉を見つけたと思ったのに興ざめだよ」
璃羽 (相手も動かせなくなる呪文を使ってた、すぐに逃げられるかもしれない。イーヌオの呪文は確か……)
璃羽 (荒唐無稽な話でも1日の間だけ無条件で信じてしまう。有効活用しない手は無いけれど……体が動かない)璃羽の想いを感じ取ったのか、イーヌオは呪文を唱えようとする。
璃羽 (! ……通じた?)
その口の動きをみるや否や、「雨夜屠夫」は<<消滅>>の呪文を唱え逃走した。この呪文により、探索者の前から跡形もなく消えてしまう。「犠牲者を魅了する」の呪文の影響から解放された探索者は、一息つきながら異次元の存在が消えたことに安堵する。
璃羽 「……さっきは助けてくれてありがとう」
一诺 「お安い御用ですよ?(軽くお辞儀をする)」
璃羽 「消えることが出来たからには神出鬼没なのは納得がいくわ」
璃羽 「あの口ぶりから察するに私利私欲だと感じたけど、雨夜屠夫に協力するカルト団体の目的は何かしら……」
一诺 「カルト団体とは殺害が共通目的なんだろうか」
璃羽 「なるほどね」そんな話をしていると、そろそろ煌が情報を集め終わり戻ってくるだろう。
璃羽 「一诺は悪意に鋭そうと思っていたけれど、何か感じた?」
一诺 「表世界の人間ではないね。身のこなしが一般の者では無かった」
龍汪 「銃買ってきたぞ。普段使いなれてる(DEX高い)一诺がオートマ持つか?」
一诺 「おぉ、ありがとう。いくらだった?」
龍汪 「次必要な時、一诺に頼むから気にするな」
龍汪 「璃羽さんには普通の拳銃を。僕は回避が高いから一先ず素手で行くかな」
一诺 「分かった」
龍汪 「中での情報をまとめると。黄さんは占いするために陀螺に会いに来ていた。自分も黄さんについて占いを見たが内容は
・マントを羽織った怪物
・見たこともない村で探索者と陀螺が追手から逃走する光景。
・夕日が差すビルの屋上で空に向かって両手を掲げる影。
う~ん、こんな感じだろうか……」トーロゥから聞いた占いで黄の情報が分かるかと思ったが、占いで見えた内容はまた違う光景だった。
一诺 「こっちは雨夜屠夫に会ったよ。逃げられたけど」
龍汪 「! 本当か、無事でよかった……」
龍汪 「黄さんは会って行方不明になったが、一诺 達は上手く対処してくれたんだな」雨音の中に、懐かしい声が聞こえてくる。
黄 「やはり君たちか!お願いがあるんだ。『雨夜屠夫』を共に見つけ出してくれないか。今ちょうど雨が降っているから、蝴蝶谷に向かおうと思う」
一诺 CC<=80 【心理学】 (1D100<=80) > 13 > イクストリーム成功
一诺 (とくに操られたり、狂気や怯えが見えるわけでもない)黄の眼差しには焦燥感と決意が交錯していた。彼は、この謎めいた雨夜の中で暗躍する存在に対抗するため、探索者と手を組むことを切望していた。
璃羽 「警察では頼めない理由があるの?」
黄 「いや、警察も追っている。ただ警察ってのは直感も大事にするんだ。経験からくる勘というか、君達の雰囲気が解決への手がかりになる気がしている」
龍汪 「先ほど現れたと聞きました。一诺が逃がしたということは見つけても容易く逃げてしまう可能性があるので、作戦が必要そうですね」
黄 「あぁ、車を停めているんだ。向かいながら話そう」
璃羽 「私も顔が割れているから囮には使えない。顔が知られてないのは龍汪しかいない」
龍汪 「まぁ何とかなるだろう」璃羽(私の髪色に縁を感じたと言っていたけれど、反抗すればどうなるか分からないのに……)
璃羽(何を期待しているの? この事件に協力できる味方?)
璃羽 「一诺が呪文を使えると知らない筈なのに殺気で悟ってた。次からは隠して」
龍汪 「殺気……? 一诺は殺気は出ないから口の動きとかだったのかな」
一诺 「動揺していてね、黄が持っていた本はもともと雨夜屠夫の手にあったというのに油断してたよ」
一诺 「彼は中に書いてある呪文は全て熟知しているのかもしれない」蝴蝶谷の前に車が停まる。ここからは歩きで行くしかなさそうだ。
龍汪 「じゃあ行こうか」
龍汪 (ここは夢に出てきた知らない村に似ているだろうか?)とくに夢に出た場所と一致するところはない。雨に濡れながら、静寂に包まれた道を歩いていく中で、一つの異変に遭遇する。蝴蝶谷の人気のない道端で、女性が怪しげな男に首を絞められている光景が広がっていた。
龍汪 (ここでは追ってが来ないということか、陀螺さんも居なさそうだ)
龍汪 「!」その男が女性の首を絞めている最中、ゆっくりと探索者の方を振り向く。
璃羽 CC<=70 【射撃】 (1D100<=70)> 7 > イクストリーム成功
KP 「問答無用すぎィ!」
雨夜 「……ッ、この程度で俺に手を出すとは」
驚きとともに、「雨夜屠夫」は探索者に悪態をつき、<<消滅>>の呪文を唱え逃走する。
この呪文により、「雨夜屠夫」はまた探索者の前から跡形もなく消えてしまう。璃羽 「簡単に殺害するのに随分と逃げ足が速いのね……」
首を絞められていた女性は一息をつきながら安堵する。
一诺 「自分より力の弱い者しか相手にしないところを見るに、そういう人間なんだろう」
璃羽 「逃がしてごめんなさい。女性が危険だったし、ひるませて気を逸らせ呪文を使おうと思ったけれど、気付かれない方が大切みたい」
黄 「人命の方が大切だ。ありがとう璃羽さん」
一诺 「気づかれる前に倒す必要があるって分かったことも進展だよ」
龍汪 「この場所が夢で次に現れる場所だったということは、毎回ここに来るわけでもなさそうだ」
黄 「そうだな、また調査を進めよ。そうだ、君達にこの本を持っていて欲しい」黄はそういうと、鬼蚺的啟示錄の本を渡す。
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鬼蚺的啟示錄(グィランデ・チシル)Ⅰ巻」
―グラーキの黙示録Ⅰ、Ⅱ巻の完全な翻訳―
正気度ポイント喪失 1D4/2D4
<クトゥルフ神話>に+7%
研究し理解するために平均 10 週間/斜め読みに 20 時間」
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この魔道書を斜め読みをすると、以下のことが分かる」
・イギリスのセヴァン谷の湖には、鬼蚺(グィラン)という神が棲んでいる。そして、その神を信奉する者が湖のほとりに住んでいる。
・鬼蚺 (グィラン)の洗礼を受けた者は、鬼蚺 の奴隷になることと引き換えに老いなくなり、また数多の知識を得ることができる。
しかし動作が奇妙にギクシャクするようになり、また、六十年前後と言われるその寿命が来ると、日の光を浴びるだけで身体が朽ちるようになる。
-----------------呪文①-----------------
<<神格との接触/グラーキ>>」
太古の昔に隕石に乗って地球に到来した旧支配者。現在は隕石が落下してできたセヴァン渓谷の湖の底に潜んでいる。湖畔に住む人々の中には、グラーキの棘に刺されて体液を注入され、操られる者もいる。彼らは助からず、人格が消えて身体が朽ちていく。グラーキの従者は、グラーキと記憶を共有していることからグラーキの手足のように行動する。従者になった直後は人間らしい外見をしているが、時が経つにつれて悍ましいアンデッドの外見に変わる。このようにアンデッド化して長期間経っている従者は日光の強う光を浴びると緑の崩壊により最後は崩れ落ちる。
-----------------呪文②-----------------
<<隕石の招来>>」
コスト: 20MP、 6D6 正気度ポイント
使用するには女性の APPが合計で 50 以上になるよう生贄を捧げ、その遺体を辱める必要がある。
この呪文を唱えると、外なる神の従者が現れて音楽を奏で始める。
成功するためには [1D3+2] ラウンドのあいだ、従者が音楽を奏で続ける必要がある。
従者が音楽を奏で終えたならば、隕石が従者のいる場所を中心にして落下する。
隕石の到達には、さらに 1 時間が必要である。隕石の衝撃で地面は抉れ、クレーター湖ができ、この湖にはグラーキを呼び寄せることができる。ただし、従者が音楽を奏でている最中に外なる神の従者が撃退されれば呪文は失敗する。一度呪文が唱えられれば使用者が死亡しても従者は音楽を奏で続ける。
----------------------------------------一诺 「そういえば君の同僚から、黄を探してくれって頼まれてるんだよね。教えたら報酬が貰えるからさ、連絡して良い?」
黄 「あぁ、もちろん」探索者が黄を連れて警官に連絡すると、お礼としてHK$5,000を貰うことが出来るだろう。
また、探索者は 2D6 正気度ポイントの正気度報酬を得る。この報酬は即座にステータスに反映させること。龍汪「そういえば黄さんは行方不明となっていたけど何方へ行ってたんですか」
黄 「あまり記憶がないんだが、俺の前に時折現れる雨夜屠夫を追っていた」05.過去へ
ここまで探索の旅を続けてきた探索者は、行動の道しるべを見失っているはずだ。黄の探索は終了し、雨夜屠夫の居場所も分からない。そんな中、探索者が普通の生活に戻り一週間が経った頃、ニュースでは、「雨夜屠夫」の新たな犠牲者が出たことが報じられた。警察は全力で捜査を行っているものの、犯人逮捕には至っていないようだ。
璃羽「イギリスのセヴァン谷の湖……カルト集団もイギリスだった。後ろ盾がある雨夜屠夫は、数多の知識から鬼蚺の奴隷になっている可能性もある。その場合、寿命にもよるけれど陽の光が苦手な可能性はある。イーヌオが表舞台にはと言っていたから、少しはその可能性も上がるのかしら……」
龍汪(トーロゥ、何かプレゼントが欲しいと言っていたな)
龍汪 「記憶では追われていたから何か役立つものが良いかな」龍汪が買い物をしていると、「※偶然出会った」一诺が後ろから声を掛ける。
※最初、『陽光酒家』での相席シーンで黄が突如席を外したのは、「雨夜屠夫」による罠だった。雨夜屠夫は<<タールクン・アテプの鏡>>を使って、店の外を駆け抜ける車の窓ガラスに自分の姿を映し出し、黄を引き寄せたのだ。
雨夜屠夫の魔術によって黄と探索者の出会いが妨害され、本来の未来と矛盾が生じた。この時系列の混乱を防ぐために、イブ=ツトゥルが探索者やNPCを操り、元通りの歴史に修正しようとしているのだ。
一诺 「誰かへのプレゼント?」
龍汪 「陀螺さんがまた来た時プレゼントが欲しいと言っていたから。約束を果たそうと思ってね」
龍汪 「このネックレスが良いかな。先の玉が煙玉になっているみたいだ」
一诺 「いいな、喜ぶんじゃないか?」一诺 「あ、璃羽はその後どうしたか聞いてるか。お前の角を狙ってるんだろ」
龍汪 「はは、狙っているというと悪者っぽいな。璃羽さんは自宅兼施設で研究をしているそうだ。何かあったら力になってくれるらしい」
龍汪 「イーヌオにも借りがあるからと言ってたぞ」
一诺 「煌ばかり璃羽に気に入られて羨まし……えっ、そんなことを? そしたら、璃羽に髪飾りを買おうかな」
一诺 「恩を返してもらった時に、すかさず髪飾りを渡すと、さらに返さなくちゃという気持ちが働き、続くってわけ」
龍汪 「一诺の人心掌握には恐れ入るよ」蒋雪儿-莫问归期『怎奈何无人了解我心思』【动态歌词】 - YouTube
二人はプレゼントを手に再び陀螺の部屋に足を踏み入れると、以前と同じく彼女はベッドに腰かけていた。しかし、唯一異なるのは、花瓶に活けられたヒマワリの花が朽ちかけていたことだ。陀螺は冒険者の姿を見て微笑みかけ、やや憂いを含んだ表情で言葉を紡ぐ。
陀螺 「久しぶりだね。約束のこと……覚えてる?」
彼女の言葉にはかつての探索者との交わした約束への思いが滲んでいる。
龍汪 「これがプレゼント。同じ夢を見たかは分からないけど、あの時逃げていたから役に立てばと思って」
陀螺 「ありがとう……! えっと、でもそれは次回受け取ろうかな」
龍汪 「どうして? 今渡すよ」
陀螺 「ううん……(そうすれば龍汪は、また来てくれるはず)」
龍汪 「(ヒマワリの花が朽ちかけている)黄さんは最近見えてなさそうだ、忙しいのかな」
陀螺 「えぇ、犯人を捜しで忙しいのかもしれないわ」
陀螺 「ねぇ、また占いをして行かない?」
一诺 「不思議な景色が見えると言ってた占いか」
一诺 「俺も見てみたいな」
陀螺 「占いをするためには、「夢の薬」が必要なの。夢の薬は九龍城の麻薬中毒者が HK$600(全員分合わせて)で売ってくれる」龍汪 (陀螺さんと黄さんが良い仲であれば落ち込んでしまっているかもしれない)
龍汪 「何か気分が優れないのであれば、気持ちを落ち着かせるおまじない(秘孔)があるよ」
陀螺 「いいの? そしたらお願いしようかな。関節の痛みにも効く?」龍汪 CC<=80 【応急手当】 (1D100<=80) > 65 > レギュラー成功
龍汪 「はい、どうかな」
陀螺 「なんか気分が良くなったわ! ありがとう」一诺 「麻薬中毒者から夢の薬を買ってきたぞ」
龍汪 「じゃあお願いするね」
一诺 「この占い、璃羽にも見せたら喜ぶかな。彼女、知的探求心があるし」
陀螺 「女の子……」
陀螺 「もし呼びたいなら、事情を説明して店長へここまで案内するようにお願いするわ」
一诺 「煌、呼んでも良いかな」
龍汪 「じゃあ呼ぼうか」璃羽「来たわ」(まずは薬の成分から調べる)
璃羽 CC<=86 【科学(物理学)】 (1D100<=86) > 71 > レギュラー成功未知ではあるが、麻薬や毒薬の類では無いことが分かる。ただ、品質は安定していない。粗悪品もあるが、これは大丈夫そうだ。
璃羽 「……陀螺さんはどのようにして夢を見せているの」
陀螺 「この薬を投与する。その後に私が日本の独楽(こま)を回し始めると見れるわ」
璃羽 (理屈を聞きたかったのだけど、本人も分かって無いのかもしれない)
陀螺 「準備は良いかしら」
龍汪 「あぁ、大丈夫だよ」陀螺と一緒に夢の薬を使用すると、意識が急に遠のいていく。
*
探索者と陀螺が意識を取り戻すと、目の前には枯れ木に囲まれた大きな石造りのアーチが広がっていた。周囲は見たこともない植物で覆われ、密林が広がっている。
龍汪「別の場所に移動したのか……」
アーチをくぐり抜け、先に進むと、そこにはゆっくりと回り続ける巨大な怪物が広がっていた。
怪物が羽織ったマントのようなものの裾から、黒い翼を持った人ともコウモリとも分からないような存在が出入りしている。探索者はその怪物――イブ=ツトゥルを目にして、1D6/1D20の正気度ポイントを失う。
イブ=ツトゥルが探索者に近づき体へ触れる。その異形の体に触れた瞬間、血が逆流するような感覚が探索者を襲い、意識を失ってしまう。龍汪「前回の独楽(こま)で出てきた怪物か」
KP 「ここでアイデアロール……どぞ」
璃羽 CC<=75 【アイデア】 (1D100<=75) > 76 > 失敗
龍汪 CC<=55 【アイデア】 (1D100<=55) > 54 > レギュラー成功
一诺 CC<=55 【アイデア】 (1D100<=55) > 93 > 失敗煌 は、意識を失う寸前に何か不吉な存在に見つめられているような不安を感じるかもしれない。探索者は、時間の「角」を通過する際に、ティンダロスの猟犬に見つかってしまったことを悟る。
------------MEMO--------------
ティンダロスの猟犬は四本足で獲物のにおいを感知し、追跡する古代の恐ろしい生物。
地球の犬とは異なり、痩せており、いつも空腹であると伝えられている。
彼らが住むのは「角張った時間」で、人類が暮らすのは「湾曲した時間」。
時間を遡る行為には注意が必要で、猟犬は鋭い嗅覚を持ち、追跡の対象になる可能性がある。
彼らが現れるためには90度以下の角を持つ物質が必要で、その際には碧黒い煙のような状態で出現し、悪臭が発生する。
一度追跡されると逃げ切るのは難しく、安全な部屋に閉じこもるか、魔術で対抗する必要があるが、それでも無理な場合もある。
-----------------------------06.1900年の香港で
探索者は意識を取り戻すと、自分が小さな街にいることに気付いた。
満月が夜空に煌々と輝いており、周囲の建物は古い石造りだった。
街の中には街灯の灯りがなく、唯一頼りになるのは月明かりだけだった。
彼らは知る由もなかったが、この街は1900年の九龍城砦であった。辺りを見回すと、陀螺と思しき少女が風呂敷包みを背負って忍び歩きしていた。
璃羽 CC<=80 【知識】 (1D100<=80) > 38 > ハード成功
暗闇で見えづらいが、璃羽は建物などの雰囲気から1900年の香港ではないかと悟る。璃羽「……ここは過去」
龍汪「驚いたな」
龍汪「一先ず雨夜屠夫について聞いて回るか」
龍汪「陀螺さんに何か聞くと未来を変えてしまいそうだ」辺りを見渡すと、建物の影からランプを下げた白人の巡視兵が現れた。
巡視兵「Who are you? Why are you here?」
龍汪(イギリス兵か?)探索者が話しかけようとすると、陀螺と思しき少女が巡視兵の顔面を平手打ちし、予期せぬ戦闘が勃発することになった。
巡視兵「Do you want to die?」
龍汪「銃を持っているな。どうにかして敵意が無いのだと伝えることは出来ないだろうか」
龍汪(ここは夢に出てきた場所か?)KP 「イェス」
一诺 「会話を試みてみるか」CC<=61 【言語(英語)】 (1D100<=61) > 22 > ハード成功
一诺 「We are not your enemies.(私達は貴方の敵じゃありません)」
巡視兵「I don't care about such things.」
一诺 「敵じゃないと伝えたけど、そんなことどうでもいいって」
龍汪 「逃げるか」
一诺 「そうしよう」
少女 「こっち来て」
龍汪 (80年程前に陀螺さんということは御先祖様なのだろうか)少女は道を熟知しているようで、探索者たちを的確に誘導しながら逃避行を始めた。
探索者たちは彼女に従って、追手を振り切るために共に逃走することが出来るだろう。
兵を振り切ってしばらく走ると、少女の家に辿り着く。その家は田舎の雰囲気漂う平屋で、中には三人家族のための家具が配置されていた。しかし、家の中には他の家族の姿は見当たらない。少女は陀螺に似た容姿を持つが、彼女は自分を李菲(リー・フェイ)と名乗る。陀螺という名前も知らないそうだ。
璃羽は電化製品やプラスチック製品が一切ないことに気付く。これは、1980年代の世においては、例え貧困層の家であっても珍しい状況だった。
→ 1900年の香港だろうという知識。璃羽 「雨夜屠夫 については知っている?」
李菲 (リー・フェイ)「いいえ、知らないわ」
璃羽 「鬼蚺(グィラン)という神や信者について知っていることは」
李菲 「鬼蚺(グィラン)……さっき、こんな本を見つけたわ」彼女は机の上に風呂敷を広げ豪華な装丁の真新しい本を取り出した。
この豪華に装丁された本は、『鬼蚺的啟示錄(グィランデ・チシル)』Ⅱ巻であった。-----------------------------------
鬼蚺的啟示錄(グィランデ・チシル)Ⅱ巻
―グラーキの黙示録Ⅲ、Ⅳ巻の不完全な翻訳―
正気度ポイント喪失 1D3/2D3
<クトゥルフ神話>に+5%
研究し理解するために平均 7 週間/斜め読みに 15 時間
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この魔道書を斜め読みをすると、以下のことが分かる
この本には、地下深くの迷宮に住むと言われる迷路の神と、催眠術を使う蛇の神について書かれている。
ただし、誤訳らしい箇所が散見されるため、書かれた呪文の一部は使い物にならないだろう。
--------------呪文①-----------------
<<神格との接触/バイアティス>>※呪文は不完全である
『妖蛆の秘密』という書物にその名が記されている以外不明であったが、実はイギリスの古城の一室に棲息していた。城が出来た時点で、まだ幼体だったバイアティスが中へ運び込まれ成長を続けていた。部屋の入り口を抜けては出られない程に成長していたところで発見され、城毎焼かれてしまうが生死は不明。発見時点でまだ成長の途上であった可能性もあり、能力等については不明。イギリスの伝承においてはセヴァン渓谷の古城に封印されているとされる
--------------呪文②-----------------
<<神格との接触/アイホート>>※呪文は不完全である
迷宮の神、アイホートは白く巨大な蟲のような姿を持つ。迷宮の奥で人間を誘い込み、子供を産み付け、孵った幼虫が宿主を喰い破り、最終的には宿主の脳を破壊する。
アイホートはテレパシーで人間と会話し、契約を断ると殺される。アイホートの仲間たちが人類の後継者とされ、グラーキの予言に登場する。棲息地はセヴァン渓谷。
<<ゴルゴロスのボディ・ワープ>>
この呪文は、使い手が体の形を変えることを可能にします。呪文の文句を1D6+4分の間、繰り返し唱えなければなりません。
その間に6MPを消費し、増加するSIZか減少するSIZと同じ値だけさらにMPコストが掛かります。
呪文を使うたびに2D6のSAN値とPOWを1消費します。一回の呪文で一つの姿にしか変身できず、効果は永久です。
ただし、この呪文は自分を対象としてしか使用できません。変身した身体は肉のままであるが、見せかけだけは木・石・金属などにも変化できます。
変身できるのはSIZとAPPのみで、他のパラメータは変化しません。変身できる姿は自分の知っているものに限られます。
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<<卜占(ぼくせん)>>
呪文のかけるには4MPと正気度1D2点のコストがかかります。使い手が理解できる場合、この呪文は未来の予兆を教えてくれます。卜占が理解できるのは《幸運》ロールに成功した時で、未来の予兆はあいまいで謎めいた文章や夢のようなものかもしれません
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<<ヨグ=ソトースのこぶし>>
この呪文は1d6の正気度ポイントと17マジックポイントを代償に、平均60ダメージを与え、STR+CONの合計値が50以下の対象を強制気絶させ、14m以上吹き飛ばす効果があります。これが即座に発動できるため、比較的手軽に強力な効果を得ることができます」
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<<門の創造>>
この呪文は異なる場所や次元、世界へ導く重要な魔法であり、各「門」は特定の場所への通路を提供しています
-------------------------------------------------李菲「正直に言うわ。私は九龍城砦で盗みをしていたの。でも、理由はちゃんとあるのよ。実は、私の両親がこの地域の役人でイギリスの兵隊にさらわれたみたいなの。私は助けるために、まずは城内を偵察していたんだけど、金品も必要だったから……」
龍汪「何のために攫われたんだろうな。何処に居るのか見当はついているのか」
李菲「両親はこの地域で住民の相談を受けることが多くてね、最近は『裁判所建設のために雇われた家族が、裁判所ができても一向に帰ってこない』という相談があったの。両親はイギリスの駐在部隊へ抗議しに行ったんだ。でも、そこからは音信不通。もう一ヶ月以上、どこにいるかもわからない」探索者が李菲の家での調査を終え、夜が更けた頃、李菲と探索者は疲れ果てて眠りにつくことになった。全てが進み始めるのは翌日からのことだ。
翌日、早朝の静けさを打ち破るような扉を叩く音が、李菲の家に響き渡った。
李菲が扉を開けると、そこには右足に義足をつけ、洋装に身を包み、日本刀を帯びた、堂々とした態度の男が立っていた。西郷菊次郎「おはようございます。西郷菊次郎と言います。日本の官僚でイギリスの植民地統治を視察しています。現地住民の生活状況や政策を調査し、より良い状況を築くための提案をまとめるつもりです。ご理解いただければと思います」
男は自らを西郷菊次郎と名乗り、香港を訪れた日本の官僚であることを明かした。
その目的は、イギリスの植民地統治を視察し、特に現地住民の生活状況を確認することだった。李菲の家を訪れたのも、その一環らしい。李菲「おはようございます、西郷さん。私は李菲と言います。実は両親が九龍城砦に捕えられているみたいなんです。私の父親は右目の下に黒子があるんですが、もしかしたら、九龍城砦で見かけたことはありませんでしたか?」
西郷はしばらく黙ってから次のような情報を語り始めた。
西郷「九龍城砦内にある裁判所が完成した後も、中華人民共和国の労働者たちは何者かの指示で宿舎に留まっているようだ。その中に、右目の下に黒子のある者がいたという記憶がある。確かに拘束されている様子はなかったが、言われてみれば表情が虚ろであったような気がする」
この話を聞いた瞬間、李菲は両親を救出する覚悟を決めていた。
李菲「……私が助けに行かないと」
彼女の目には決意が宿り、心に燃える思いが灯った。話が終わると、西郷は李菲の家を立ち去る。龍汪は頬を引っ張った。夢ではなく「現実」だと思い知らされるだろう。
李菲「あの、こんなこと急に頼むなんて……。でも、どうしても両親を助けてほしいんです。もしできるなら、一緒に行動してくれませんか?」
璃羽「……もしものために秘薬の研究を完成させておくべきだったわ」
龍汪「じゃあ行きましょうか」
李菲「! ありがとうございます!ありがとうございます!」深夜、探索者は李菲の案内に導かれ、九龍城砦に忍び込むこととなった。
裁判所の建物の隣には、中国人作業員用の宿舎がたたずみ、周囲には一切の人影がなかった。静寂が夜を包み込んでいる。璃羽 CC<=95 【聞き耳】 (1D100<=95) > 66 > レギュラー成功
今、人は誰もいないことがわかる。璃羽「中に忍び込んで情報を手に入れたり、制服があれば変装が必要かしら……」
李菲「それなら、労働者たちは何者かの指示で宿舎に留まっていると西郷さんも言ってたから、中国人作業員用の宿舎に向かう」
璃羽「えぇ」探索者が中国人作業員用の宿舎に忍び込むと、部屋の隅から煙が立ち上っていた。そして、その煙の中からティンダロスの猟犬が姿を現す。時間遡行の匂いを嗅ぎつけたこのクリーチャーは、探索者を狩るために忍び寄ってきたのだ。
龍汪 (戦っても到底勝てる相手では無さそうだ、見えているのは俺だけか?)
璃羽 「可愛いわんちゃん……」
一诺 「不気味な犬だね」ティンダロスの猟犬 1d100<=90 【前足攻撃】 (1D100<=90) > 46 > 成功
ティンダロスの猟犬は目ざといと感じた煌を狙っているようだ。龍汪 CC<=65 【回避】 (1D100<=65) > 50 > レギュラー成功
龍汪が回避した後に、一诺が拳銃を構える。妹 (バトル用の技能取り忘れた……)
一诺 CC<=20 【拳銃】 (1D100<=20) > 85 > 失敗
弾は大きくそれて地面に当たる。
璃羽 「?!」
一诺 「実はインテリマフィア……なんだよねぇ」
龍汪 「銃一応貰っておくな」璃羽 CC<=70 【射撃】 (1D100<=70) > 66 > レギュラー成功 1D6 (1D6) > 6
璃羽が見事な拳銃捌きでティンダロスの猟犬を撃ち抜く。しかし、弾は犬を擦り抜けた。璃羽 「ッスー……逃げられるかしら」
一诺 「どうみても俺達より足が速そうだ」そんなことを話している内に宿舎の扉が開いた。西郷菊次郎が静かに姿を現す。
彼は探索者と李菲の行動を予見しており、義侠心に満ちた心から手助けしようと後をつけていたのだ。西郷は手にした日本刀でティンダロスの猟犬へ果敢に斬りかかり、一刀両断にして撃退する。探索者は、彼の勇猛な攻撃によって怪物が撃退されたことを不思議に思うかもしれない。
西郷 「これは我が故郷、日本の伝説に基づくものだ。何十年もの長い間、持ち主に大切にされ続けた品物は『付喪神』と呼ばれる妖怪に変わり、魔力を帯びると言われている。この日本刀もまた、父から譲り受けたもので、無銘ながら大切にされ続けてきたものだ」
龍汪 「それは凄いですね」探索者と西郷が話していると、突如として李菲の背後から中国人の男女と、一人の白人兵が姿を現した。彼らは李菲を容赦なく捕まえ、白人兵は逃走、中国人の男女は探索者の前に立ちはだかる。彼らの妨害をかわして白人兵と李菲を追うためには、<DEX>の対抗ロールでDEX5に勝利する必要がある。
龍汪 CC<=95 【追う】 (1D100<=95) > 87 > レギュラー成功
埋め込み:https://www.youtube.com/watch?v=D9G1VOjN_84
探索者が白人兵を追いかけると、白人兵は車に乗り込んで逃走する。探索者たちは追いつくことはできないが、<追跡>に成功することで車の後を追うことができる。車のタイヤをパンクさせるなどして足止めを行った場合、<追跡>の判定にボーナスを与えることができるだろう。
璃羽 「待ちなさい!」
璃羽 CC<=10 【追跡】 (1D100<=10) > 9 > レギュラー成功
璃羽 (車痕、まだそんなに走って無い筈)探索者が後を追うと、 璃羽の見事な追跡で乗り捨てられた車を発見する。車の前には奇妙な図形が彫られた岩が立っており、不気味な雰囲気を醸し出していた。
もしも<追跡>に成功していた場合、岩の前には32口径リボルバーが落ちている。これは白人兵が車を降りた際に落とし、追手が迫っているために回収を諦めたものだ。
<追跡>に失敗していた場合、白人兵には落とした銃を回収する猶予が十分にあるため、このアイテムは手に入らない。璃羽 「イーヌオには私の御下がりをあげるわね」
璃羽 「待て、……伏せ」
一诺 「ワン! ヘッヘッヘッ」
璃羽 「マフィアのボスが銃を使えないなんて驚いた。でもそれ以外に力があることは知ってる(と言って銃を渡す)」
一诺 「帰ったら銃の練習……するか」龍汪は李菲の両親と思われる中国人の男女を念のため家に連れ帰り縛って置いた。
縛る際、動作が奇妙にギクシャクしているように感じた。龍汪 「この先慎重に行こう」
一诺 「この岩、奇妙な図形が彫られてるな」
龍汪 (貰ったナイフをそっと突き立てる)瞬間、不思議なエネルギーが身体を駆け巡り、3マジック・ポイントと1正気度ポイントを消費することになる。次元を超えた旅が始まった。探索者はワープしてしまう。西郷もまた不思議な出来事に巻き込まれた探索者を追ってワープすることになるだろう。未知なる場所へと突入する冒険が探索者たちを待ち受けている。
探索者が門をくぐると、そこは湖のほとりであった。静かな水面には月が映り、周囲にはかすかな葉擦れの音が聞こえる。
探索者は白人兵が李菲を連れて湖に入りながら何かをつぶやいているのを目撃する。
彼のつぶやきに答えるように、水面が揺れた瞬間、体中から針を生やした巨大な怪物が湖の奥底から浮かび上がる。この怪物こそがセヴァン谷のカルトが崇拝する『グラーキ』――つまり、『鬼蚺(グィラン)』であった。
怪物の恐ろしい姿を見た探索者は1D3/1D20の正気度ポイントを喪失。グラーキは恐るべき力を振るい、李菲の体にトゲを伸ばして深く突き刺す。
突き刺さったトゲは怪物の体から外れ、李菲の身体に残る。探索者が李菲を助けようと飛び出すなら、西郷は勇敢にもグラーキの気を引く役目を果たすだろう。西郷が怪物に斬りかかり、同時に白人兵との戦闘が始まる。白人兵「I want another cute girl.」
西郷は勇猛果敢に刀を振りかざし、グラーキの逆鱗に触れながらも身の機敏さで攻撃をかわしていた。怪物の体から噴き出す毒々しい黒い液体が周囲の水面に広がり、湖面が異様な光を帯びる。西郷の剣技は見事で、怪物の体に深い傷跡を刻み込んでいる。しかし、グラーキも容赦なく巨大なトゲを振り回す。彼は一歩も引かずに立ち向かっているが、限界を超えつつあることが見て取れた。
龍汪「奪還して逃走しよう」
探索者達との幾度の戦闘後、白人兵は重傷。グラーキも湖からは出れないようで、確実に逃げることが可能だと確信するだろう。
白人兵が「Invoke Graki in that place. It may take years, no, decades...」と最後の言葉を英語で呟く間に、探索者は湖畔から李菲を遠ざける。龍汪 「イーヌオ、なんて言ったか分かるか?」
一诺 CC<=61 【言語(英語)】 (1D100<=61) > 12 > イクストリーム成功
一诺 「あの地にグラーキを呼ぶのだ。何年、いや、何十年かかろうと……」白人兵の声が遠ざかり、探索者は湖畔から十分に離れた安全な場所にたどり着くと、李菲の胸からトゲを慎重に抜くことができた。李菲の体は手当てを受ける。彼女は意識はあるものの、トゲによる傷が深刻だ。
龍汪「簡単な手当だけど」
龍汪 (グラーキの従者となった人間は助からず、人格が消えて身体が朽ちていく。グラーキと記憶を共有していることからグラーキの手足のように行動する)
龍汪 (従者になった直後は人間らしい外見をしているが、時が経つにつれて悍ましいアンデッドの外見に変わる)
龍汪 (アンデッド化して長期間経っている従者は日光の強う光を浴びると緑の崩壊により最後は崩れ落ちる……)龍汪 CC<=80 【応急手当】 (1D100<=80)> 6 > イクストリーム成功
李菲「……ありがとう」
李菲が嬉しそうに囁く。遠くでブーンという音が響き渡った。自分の姿が徐々に薄れ始めていることに気づくだろう。時間遡行が終わりを告げていた。
李菲は探索者と西郷に何か思い出の品を残すように頼む。彼女にはもはや身寄りも友人も残されていない。西郷は手元にあった日本独楽を手渡す。
龍汪(初めて出逢った時、動きがギクシャクしていた。彼女は陀螺なのか?)
龍汪(プレゼントは夢を見た後でと言っていた。……今がその時なのだろう)
龍汪「じゃあこの煙玉のネックレスを」
李菲「綺麗……。ありがとう」李菲は受け取った品を大切そうに赤い小さな箱へとしまう。探索者はその箱に見覚えがある。それは、陀螺が独楽を取り出したときと同じ箱だった。李菲は首から外した小さな首飾りを一番懐いていた探索者である煌に手渡すと、探索者の姿は完全に消えていく。李菲を助けたならば、探索者は2D6正気度ポイントの報酬を得る。これは即座にステータスに反映させること。
07.過去とのつながり
蒋雪儿-莫问归期『怎奈何无人了解我心思』【动态歌词】 - YouTube
探索者は、九龍城砦の売春宿の狭い一室で意識を取り戻す。暗い室内に広がる薄暗い光景が、まるで夢のように感じられた。
全ては夢だったのだろうか? しかし、探索者の手には不思議な李菲の首飾りが握られている。その宝石たちはまるで遠い記憶を呼び覚ますように光っていた。
探索者は確かに過去を訪れ、そして戻って来たのだ。不思議な冒険の中で感じた喜びや苦悩が心に残る中、陀螺は探索者の手に握られた首飾りを見て、「おかえりなさい」と微笑む。その微笑みには、時空を越えた絆の温かさが宿っていた。陀螺 「あの時は助けてくれてありがとう」
龍汪 「あの後はどうなったのか聞いてもいいだろうか」
陀螺 「私はトゲに刺されたけど、あなた達のお陰で生き残ることが出来た。ただ、アンデッド化は避けられなかった※から「ゴルゴロスのボディ・ワープ」の呪文を使って見た目を変えないようにしたの」
※既にグラーキから液体の注入を受けてしまっている。トゲによって致死ダメージを受けていないために奴隷となることは避けられた。璃羽 「血液を採ってもいいかしら」 ッスっと注射器を取り出す。
璃羽 「液体から不死の成分について知れそうね」
陀螺 「えぇ、構わないわ」
龍汪 「それで、あの光景を見せたのは、展開を繰り返すためか。それとも他に伝えたいことはある?」
陀螺 「貴方たちにグラーキを止めて欲しくて……」
龍汪 「あの移転先に居たあいつだね」
陀螺 「えぇ」
一诺 「今グラーキはセヴァン渓谷に住んでるが、もしかしてあの門は香港に今もあるんだろうか」
龍汪 「う~ん、<<門の創造>>でグラーキを飛ばすとしても、また戻される可能性があるから倒さないといけないかな……。本の中には<<ヨグ=ソトースのこぶし>>があったからそれを習得しても、あの犬のように剣しか効かない可能性もあるけどやる価値はあるか」
龍汪 「しかし、門が香港に繋がったままなのは危険だ。とりあえず門に行くか」かつて門が存在していた場所は「重慶大廈」と呼ばれる雑居ビルの中にあった。
しかし、この雑居ビルは単なる建物ではなく、得体の知れない外国人たちが住み着いており、地元の人間はあまり近寄らない特異な場所だ。
※あくまで、この時代の話。現在では改装されてショッピングモールなどもでき、雰囲気も大きく変わっている。
重慶大廈はA座からE座までの5つの建物が、まるで迷宮のように入り組んでいる。権利関係は複雑で、所有者や賃借者を数え上げることは容易でない。
探索者は入り口付近で立ち止まり、周囲を見渡すと、インド系やアフリカ系と思われる客引きたちが群れを成していた。
その中から誠実な者を見極めるのは容易ではない。ただし、<心理学>やそれに属する知識に長けている者であれば、彼らの中で信頼できる者を見つけ出すことも可能であろう。一诺 CC<=80 【心理学】 (1D100<=80) > 41 > レギュラー成功
一诺 「この人に案内して貰おうか」誠実な客引きに導かれ、探索者は不気味な地下階へと足を踏み入れると、地下階に扉が待っていた。その扉は重慶大廈の謎めいた一角に続くものとされ、その周囲には何もないデッドスペースが広がっている。
扉は鉄製でしっかりとした作りで、鎖と南京錠で固く閉じられていた。客引き「この先に何があるかは、ここに詳しい者でさえよく知らない。ただ黒いローブをまとった、怪しげな白人の男がこの扉へと入っていくことはあるんだ」
地下の秘密へ辿り着く方法はいくつかある。
<機械修理>で南京錠を開けるか、<隠れる>でローブの男が扉を開けるのを待つか。
どちらを選ぶかは探索者次第だ。龍汪「銃で撃って壊せないのか」
KP 「いいですね、どうぞ」
龍汪 CC<=70 【射撃】 (1D100<=70) > 35 > ハード成功
南京錠を銃で壊して奥に進むと、コンクリート打ち放しの細い通路が広がっていた。
通路の先には行き止まりがあり、そこには過去で見たことのある「門」の図形を刻まれた岩が、コンクリートの床から突き出している。一诺 「触れたら、湖へと飛ばされた岩だ。白人兵を追いかけた時に見かけた岩と同じ図形が刻まれてるね。『門の創造』と呼ばれる呪文によって造られたワープゾーンだと思う」
一诺 「グラーキのいるセヴァン渓谷と繋がってるあの場所にローブの男達は通っていたのか」足音が近づいてくる。
龍汪 「何か聞き出せるかな」
ローブをまとった男「What are you all doing?」男は扉にある南京錠を見ているようだ。
璃羽 「一诺、言いくるめは難しい?」
一诺 CC<=70 【言いくるめ】 (1D100<=70) > 83 > 失敗」
一诺 「We were inspecting the door.(僕たちは扉の点検をしていました)」流石に厳しい言い訳のようで、男はローブから鎌を取り出す。
璃羽 CC<=70 【射撃】 (1D100<=70) > 68 > レギュラー成功
璃羽 「1D8 (1D8) > 2不意打ちの射撃が男を襲うと顔のローブがはだける。それは既にアンデッド化した男の姿だった。
アンデッドの男は銃に撃たれた際、封筒を落としたことに気づくだろう。
封筒には何かが入っているようで、コツンと音を立てて床に落ちる。龍汪(門を作る知能は無さそうだし、念のために門も壊しておくか)
龍汪 CC<=70 【射撃】 (1D100<=70) > 14 > イクストリーム成功門に銃が撃ち込まれると、アンデッドが咆哮する。
璃羽「音で集まってきそう……、今のうちに逃げましょう」
怒りに狂っているアンデッドのギクシャクとした動きの隙間を縫い、煌は封筒を拾った。
3人は地上に出て、ひとまず落ち着ける場所につく。ローブの男が持っていた封筒包みには、以下の住所と宛先が記されていた。『土瓜灣貴州街安慶大廈 2 樓 F 室 林過雲收』」
(土瓜灣地区貴州街通、安慶マンション二階F号室 林過雲宛」封筒の中には、"儀式の成功を祈る"と書かれた便箋が慎重に収められていた。
一诺 「危険な香りはするが、根源を絶つには調べる他ないか」
08.林過雲の部屋
郵便物の宛先の住所を辿り部屋に向かうと、中には誰もいないようで物音一つしない静寂が迎えてくれた。
しかし、部屋の中からは奇妙な臭いが漏れ、漂ってきている。璃羽 CC<=86 【科学(物理学)】 (1D100<=86) > 61 > レギュラー成功
成功→この匂いが標本作りなどによく用いられる『ホルマリン』という液体のものであり、毒性があることに気付く。
璃羽 「この匂いは良く使うけれど毒性のある『ホルマリン』だと思う」
一诺 「ホルマリンね。どうしてこの部屋から香るのやら」
龍汪 「管理人に伝えた場合、部屋の探索がし辛くなりそうだな……説得次第か」
一诺 「説得しようか」
龍汪 「頼んだ」一诺 CC<=70 【言いくるめ】 (1D100<=70) > 18 > ハード成功
一诺は管理人へ連絡する。一诺 「私たちはこの部屋の異臭に気づいて、建物全体の安全を確保するために点検を行っています。鍵を開けていただけませんでしょうか? 問題がある場合、早急に対処させていただきます。住人の皆さんの安全が最優先ですので、ご協力いただければ幸いです」
イーヌオの雰囲気と口ぶりに納得した管理人は、部屋の鍵を開けてくれた。
璃羽「流石ね」
部屋の中央には封を開けられたホルマリンの瓶、その周りには女性の死体の写真やビデオテープが散乱している。
瓶には以前、死体の一部が保存されていた形跡があり、しかし、それらはすべて中身を持ち出されてしまっていた。
探索者は一瞬、理性を保つのが難しいほどの恐怖に襲われた。1/1D6正気度ポイントを失う。龍汪(雨夜屠夫の根城と言ったところか )
床に散らばった物品を注意深く観察すると、その中で一際目を引くものがあった。探索者は一枚のメモを発見した。
引き出しの奥から小さな木箱が見つかった。箱の中には黒い髪の毛が入っている。これは何者かが仕掛けた呪文の一部だろうか。
また、探索者が<図書館>の判定に成功したならば本棚に隠された『鬼蚺的啟示錄(グィランデ・チシル)』Ⅳ巻を見つけることができる。--------鬼蚺的啟示錄(グィランデ・チシル)Ⅳ巻----------
―グラーキの黙示録Ⅶ、Ⅷ巻の完全な翻訳―
正気度ポイント喪失 1D4/2D4
<クトゥルフ神話>に+5%
研究し理解するために平均 8 週間/斜め読みに 16 時間
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この魔道書を斜め読みをすると、以下のことが分かる
特定の異星人が、力は強いが知力に欠ける怪物を使役して生きている模様。
この魔道書には、怪物を呼び出す方法や操る手法、そして異星人が崇拝する神について書かれている。
------------------呪文---------------------------------
<<外なる神の従者の召喚/従属>>
コスト:14MP
装甲:呪文あるいは魔力を付与された武器からしかダメージを受けない
幸運ロールに成功した場合、銀河系星雲の中にいる外なる神の使者との接触ができる。血の生贄が必要で生贄が不適切であれば術者を貪り食う。
使者に対して「説得」ロールに成功すると「クトゥルフ神話」技能が1d3増える。
※外なる神の従者は、下級の異形の神たちと似ている。軟体動物や蛙に似たさまざまな形態を持ち、アザトースの宮廷で奉仕している。
彼らはフルートや太鼓を演奏し、踊りながら主人をたたえ、その音色は神々を呼び寄せることがある。
この音色は断末魔のようなものらしいが、アザトースにとっては興味深い刺激かもしれない。
--------------------------------------------------------
<<犠牲者を魅了する>>
コスト:2MP、1d6正気度ポイント
必要ラウンド:1R
術者は呪文が効果を表すことが出来る前に。対象と穏やかに話す必要がある
呪文を使うことで突然動かなくし、口も麻痺させて利けなくする
対抗POWロールに成功する必要がある
--------------------------------------------------------
<<消滅>>
呪文の使い手が人体の一部を入れた箱の側へ瞬時に戻る呪文
--------------------------------------------------------
<<タールクン・アテプの鏡>>
コスト:5MP、1正気度ポイント
必要ラウンド:半日
別名:銀の警告、憎しみの反射、すべてを見る目。
嫌がらせや警告目的で対象が除く鏡に術者の姿を映し出すことができる。対象が聞き取ることができる単語や短い語句を言うことができる。
--------------------------------------------------------本を読んだ探索者3名は、正気度を失う。龍汪、一诺は一時的な発狂となった。
発狂ロール
一诺 「1d10 (1D10) > 5 → 探索者をその場に釘づけにしてしまうかもしれないような極度の恐怖症。
龍汪 「1D10 (1D10) > 8 → 反響動作あるいは反響言語 (探索者は周りの者の動作あるいは発言を反復する。一诺 (イーヌオは冷や汗を流し、わずかに震えていた)
璃羽 「……今すぐに何か起こるわけでもないし、本の内容が真実とも限らない。この場所を一刻も早く探索し、この箱はマグマ近くに吊るすか、私の研究施設で水を増減できるホルマインのカプセルに入れる必要がある」
一诺 「それは名案だ。ただ、このメモを見たか」
龍汪 「カプセル」
龍汪 「メモ」璃羽 CC<=1 【精神分析】 (1D100<=1) > 36 > 失敗
璃羽 「この場所に召喚しようとしてる」
璃羽 「一先ず急いで研究施設に持ってく」
一诺 「鬼蚺的啟示錄=グラーキの黙示録、つまりグラーキの文字が左下にある。そう、グラーキを召喚しようとしているんじゃないか? (ガタガタ)」璃羽 (一诺は私がどんな態度でも変わらなかった。期待も失望もなく、あるのは……)
璃羽 「っちゅ」
一诺 「!!」
璃羽 「オキシトシンは安心すると聞いた」
一诺 「えっ!? /// ……安心したァ!」
龍汪 「オキシトシン」
一诺 「グラーキがなんぼのもんじゃい! 何体でもかかってこいやァ!」
龍汪 「グラーキ」
一诺 「あ、 煌が赤ちゃんになってるけど、どうする? もちろんキスは駄目だよ。俺意外にはね」
璃羽 「引っ張ってく」
龍汪 「う~んう~ん、俺が世界助けなきゃ……」
一诺 「まぁちょっと面白いしな」
一诺 「少しは休んだ方がいいだろう。行くぞ、バブちゃん」
龍汪 「バブ」
璃羽 「研究施設の防弾カプセルに木箱を入れる」3人は璃羽の研究施設へと向かい、カプセルをホルマリンの中に入れる。
璃羽 「中を水で満たして……後はスイッチで増減出来るから。でも"儀式の成功を祈る"と書かれてたから、笛で何かするのは別の人間。屋上に向かうのが得策かしら」
一诺 「さすが聡明だね。儀式を止めるためにも向かおうか。 煌、もう大丈夫か」
龍汪 「あぁ。何だか正気を失ってたようだ。念のため知りたがっていた黄さんにも連絡しておこう」09.夕焼け空を見渡して
Imagine Dragons x J.I.D - Enemy (from the series Arcane League of Legends) - YouTube
探索者が九龍城砦の屋上にやって来ると、不気味な雰囲気に包まれた光景に出くわした。雨夜屠夫(ユイエートーフー)は、<<隕石の招来>>の儀式を執り始めている。儀式の様子はまるで悪夢のようで、その回りくどい手順と忌まわしさは、探索者の背筋に寒気を走らせた。風が強まり、雲が空を覆い、不気味な影が屋上に舞い降りてくるような感覚が漂っている。
黄 「俺も戦う。雨夜屠夫の狂気じみた計画なんて終わらせてやる!」
九龍城砦の屋上は、それぞれのビルによって区切られている。屋上と屋上の間には約1メートルほどの隙間や、高低差がいくらかあるが、巧みな跳躍やよじ登りによって、屋上間を移動することが可能のようだ。一部の場所では飛び移るための粗末な木製の橋がかけられ、屋上を容易に行き来できるように工夫されている。上空を飛んでいく飛行機が轟音を立て、わずか数十メートル上空を通り過ぎた。九龍城砦のすぐ近くには啓徳空港があり、離着陸する飛行機が絶え間なく通過している。探索者は「雨夜屠夫」の儀式を阻止するために、戦闘を余儀なくされた。この激しい戦いでは、屋上間を移動するための巧妙な手段が駆使されることだろう
雨夜屠夫 「無駄な努力だ。お前たちの抵抗は虚しく、儀式は進む」
璃羽 「今日は逃げないのね。何時もはすぐに逃げてお話も出来ないのに」
雨夜屠夫 「お前たちが止められるとでも思っているのか」
雨夜屠夫 「お前たちの勇気も虚しく、儀式は進んでいく。絶望の中で散れ!」
雨夜屠夫 「演奏が終われば、お前たちの運命は封じられる。終わりなき夜に落ちよ!」龍汪 CC<=70 【射撃】 (1D100<=70) > 11 > イクストリーム成功
龍汪「1D8 (1D8) > 2」
璃羽 CC<=70 【射撃】 (1D100<=70) > 51 > レギュラー成功
璃羽「1D8 (1D8) > 8」雨夜屠夫 CC<=80 【気絶対抗】 (1D100<=80) > 61 > レギュラー成功
銃を受けた男は一瞬意識を失いそうになるが、なんとか持ちこたえる。雨夜屠夫 「俺が倒れても……演奏が終われば、どのみち儀式は成功する。この地には隕石が降り注ぎ、鬼蚺(グィラン)の新たな棲家となるのだ。……ククク」
雨夜屠夫 「フゥ...フゥ……この光景を特別な場所で見学させて貰うよ……」男はそう言葉を残し、消滅の呪文を使って消えた。
黄 「クソ、また逃したか……だが、俺達はあの怪物を倒すぞ」
璃羽「怪物でも叩き切れる西郷さんの剣があれば」そう璃羽が零すと、階段を駆け上がる音がした。陀螺だ。彼女は卜占により隕石の落下を予知していたのだ。
その情報を手にし、探索者たちに加勢するため14Kの監視をすり抜けやって来た。璃羽「陀螺が持っていた煙玉も、何十年と大切にしてきたから、もしかしたら……」
龍汪「陽の光が危ない、黄さんが受け取ってくれないか」
黄 「受け取る……? 分かった」トーロゥは赤い小さな箱から煙玉を取り出した。陀螺は建物の影で日光を避けながら手渡す。探索者は付喪神を用いて外なる神の従者を撃退し、隕石の招来の魔術を失敗させると、陀螺はきょとんとした顔で探索者を見つめる。
彼女は卜占で見た未来ではないことを悟る。陀螺が見た未来では、彼女は落ちてくる隕石を止めるために命を落とすはずであった。独楽が――そう、イブ・ツトゥルが見た未来とは全く別の未来が、今ゆっくりと回り始めたのだ。
黄昏色の空を覆い隠すように、飛行機が飛んでいく。既に日は沈み、夕闇が訪れていた。
璃羽「黄さん私の施設に奴がいるので後はお願いします。箱に戻ってくるので、逃げないようにして下さい」
黄 「! そうなのか? 一体どうやって……って聞くのも愚問か。こんなことがあった後だ」
黄 「ありがとう、感謝するよ」龍汪「璃羽さん、この角の研究をお願いしても良いかな」
龍汪「陀螺さんが陽の光を浴びられるように」
璃羽「死力を尽くすわ」
璃羽「不死と陽が関係しているから、直ぐには難しいけど」夕闇の中で、探索者は陀螺と語り合う。
(一诺 「恩を返してもらった時に、すかさず髪飾りを渡すと、さらに返さなくちゃという気持ちが働き、続くってわけ」)
龍汪「この時代の陀螺さんにはイヤリングをあげる」
龍汪「陀螺さん、一緒に陽の光を浴びよう。黄さんもきっと喜ぶ」
陀螺「黄さんはお得意様だから喜んでくれるとは思うけど、きっと龍汪さんが想像している関係じゃないわ」
龍汪「?」
陀螺「私も、貴方と一緒に生きていきたい」陀螺はそう言って龍汪に抱き着いた。彼女を助け出し、人間に戻すために新たな大冒険を始めることを決意するかも知れない。しかし、その冒険の行方はこのシナリオでは描かれることはない。彼らの未来は無限の可能性に向けて漕ぎ出していったのだ。
・生還した探索者は1D6の正気度ポイントを獲得する。
・さらに、隕石の落下を阻止していた場合には1D6正気度ポイント。
・重慶大廈の『門』を破壊し、グラーキの従者を倒していた場合には1D6正気度ポイントを獲得する。
・雨夜屠夫が逮捕されていた場合にも1D6正気度ポイントが加えられる。
※「雨夜屠夫」こと林過雲はホルマリン漬けとなった。感想
▶ 姉:感想(ここをクリック ※ネタバレ)
美しい世界観、それに合うイラストと音楽。シナリオも歴史的背景などが盛り込まれていて、その世界を存分に味わえるように作り込まれているので、しっかりと没入しやすく楽しかった!
自分でKP回すには実力的に躊躇う長編作品だけれど、妹が内容の理解、遊びやすいように調べたりなど工夫をしてくれたので、この世界観を知れて嬉しかった🌸
中華料理店の佇まいを見つけると、99で遊んだ世界を思い出す。また、ファミマの下記も美味しい。
TRPGで遊ぶ度に色んな世界を見に行けて、探索者達も増えていく……これは沼。
▶ 妹:感想(ここをクリック ※ネタバレ)
姉が色々と攻略方法を提案してくれたけど、シナリオの理解が早すぎて逆にKPの私が置いてかれることあったね。これがリアルINTってやつ、ね。
設定が歴史に沿っていたり、ダークな雰囲気だからか、登場人物も今までと違った大人っぽい雰囲気で良かった。トーロゥちゃん× 龍汪くん、犬男× 璃羽ちゃんのCP可愛いね。
99を五感で楽しもうと姉が買ってくれた麻辣ピーナッツは本当に美味しかった。
というか、タイマンシナリオじゃなくても普通に遊べるね!ということは遊べるシナリオが盛り沢山、夢は無限大ということか!