価値観を話して遊ぶ、なんちゃって育成系ファンタジー。
今回、ずっとやってみたかった自作のTRPGを二人で遊んでみた!
そして、身内でしか遊ばないので好きな音楽かけて遊んだのも楽しかった……。
やりたかったこと
・自由度の高いシナリオ
・MBTI 要素を入れてみたい(ほんのフレーバーになったけれど)
・価値観を聞けるTRPGを作りたい
キャラクター紹介
・推奨技能 回避or隠密、説得、知力、目星
・PLは子供と大人2つの容姿を用意する(技能は変わらない)
PL 妹 : イア
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技能 / 設定
▶ KP情報(ここをクリック ※ネタバレ)
PLはループするうちに複数の平行世界から干渉を受け、似た世界の映像を見る。(それは未来かもしれないし、答えかもしれない)
KP姉 : NO NAME(サクラ)
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技能 / 設定(KP情報 ※ネタバレ)
技能 : ダイスを振る時、基本技能80で振る。設定 : 相手の希望によって性別や話し方が変わり、また敬語か平常語か、引っ張っていくか、後ろをついていくかなど変化するキャラクター。よって、子供時代は中性的な容姿と、大人時代では男女の容姿を用意する。(今回は男性で進んだ)
本編
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00.記憶
誰かの全力疾走の後のような呼吸の音がする。赤く黒い液体が地面にゆっくりと広がっていった。混濁した思考が少しずつ清明になっていく。
この呼吸の音は自分の物。そして手には鮮血の滴るナイフが握られている。ー 貴方は理解している、この物語を終える方法を。
既にこと切れたはずの人物と目が合った。その人物は何処か笑っているように見えた。
*
フリー効果音素材「砂浜の波の音」試聴ページ|フリーBGM DOVA-SYNDROME
カルネアデスの板とは、ギリシャの哲学者カルネアデスが提唱したとされる倫理・法律の問題である。ある日、一隻の船が難破し、乗組員全員が海に投げ出されてしまう。必死に泳ぎ、偶然見つけた船の板切れにすがりついた。
なんとか助かったと思った矢先、この板切れにつかまろうとする別の乗組員が現れる。できれば一緒につかまって助けを待ちたいところだが、この板切れは一人の重さにしか耐えられそうにない。
板切れが沈んでしまえば、自分も乗組員も溺れて死んでしまうだろう。
突き飛ばせば自分は助かるが、突き飛ばされた乗組員は掴まるものもなく力尽き、水死してしまう。その行動は、無罪なのか? それとも罪に問われるべきなのか?
01.春眠
貴方には二つの記憶がある。いや、それしかないと言うべきか。 鮮血の流れる死体の記憶と、カルネアデスの坂の知識。 自分が一体何者なのか、何をするべきだったかのかも覚えていない。
目の前が暗いのは、瞼を閉じているせいだと気が付くのにそう時間はかからなかった。 徐々に身体の感覚が戻ってくると、自分は地面に横たわっており、柔らかい土の感触にゆっくりと瞼を開けると、ピンク色の花を付けた木々がひらひらと花びらを落とし、木漏れ日が光に慣れない目の奥へ刺さる。
すると、目の前に一人の人間が手を差し伸べていた。 中性的に見える小さな子供は、こちらに手を差し伸べて穏やかに微笑んでいる。
NONAME :「……この手を取ってくれますか?」
イア : 「あ、ありがとう」
「貴方様の御名前はなんていうんですか?」
「私はイア、貴方は?」
「……私に名前はありません」
「そうなんだ……家族はいるの?」
「それも覚えてません……。もしよろしければ、名前を付けてもらっても良いですか?」
「名前がないと呼びにくいもんね」名前のない存在は、まるで表情が抜け落ちてしまったかのように、その表情が変わることは無い。
「それじゃあ……サクラとか?」
サクラ:「 サクラ…。……不思議ですね、何だか初めからそう決まっていた気がします」
(目に映った景色からとった名前だけど、喜んでもらえてよかった)
「もしかしたら私達同じ境遇とかかな」
「貴方は名前がなくて、私はあんまり記憶がないの」
「イア様も記憶が無いのですか……。確かに似てますね」
「様は堅苦しいからイアでいいよ!」▶ KP情報(ここをクリック ※ネタバレ)
裏では、愛情度と疑心度を管理している。判定ボーナスや、詰みそうな時、愛情度が高いと進みやすくなる。手を取ったり、名前を付けたり、話し方の決定により愛情度が増える。疑心度は名前を決めなかったり(その場合はNO NAMEで進む)手を取らなかったりすると増えていく。
立ち上がった時、背丈が小さいと思った目の前の人物と自分はそう変わらないことに気が付くだろう。手足の大きさから察するに自分もまた10歳程度であり、話す声もまた子供のものだ。
「イア……の側にこれが落ちていたのですが」
「なに?」それはチェーンが通された銀の指輪だった。
「へぇ~綺麗だね!」
「……イアに持っていて欲しいと思うのは何故なんだろう」サクラはそっとそれをイアの首へかけた。
「似合うかな」
「似合う……凄く」
「でもこれ誰のなんだろう」→指輪を見る CCB<=75 【目星】 (1D100<=75) > 64 > 成功
良く見れば自分の名前が刻印されている。あまり見たことのない素材で出来ており、手で握りしめても熱を吸収せず冷たい。
「何か記憶が分かるかもしれないし、少し話しをしよう」
「そうだね。私もサクラ君に色々聞きたいことあるよ」二人は少し話をすることにした。
「サクラ君……俺は男、なのかな。そしたらイアを守りやすくなるから嬉しいな」
「あ、印象から男の子かなって思ったけど違う可能性もあるね!」
「イアがそう思ってくれたなら、嬉しいんだ。僕の方が良い? 俺が良い?」
「そうだなぁ、通常が僕で、ふとした時に俺って言うのはどうかな?」
「ギャップがあってカッコいいでしょ」
「それが良い。イアの側にいる男の子はそんな感じがする」表情のなかったサクラが、少し笑ったように見える。
「そういえば、さっき「"も"記憶が無い」って言ったよね。サクラ君も記憶がないってこと?」
「そうなんだ」
「どこまで記憶があるの?」
「何も記憶が無いと言って等しい。でも一つだけ分かる。自分に与えられた使命が」
「使命?」
「……イアを守ること」すると、頭痛と共に目の前が一瞬暗くなる。まるで以前見たことのあるかのように脳裏に思い浮かんだのは、剣を持った人間が表れて、自分を突き刺すシーンだ。
SAN値チェック 0/1D6 > 成功 減少無し
(頭痛..….いつかの夢?)
「イア、どうかしたのか? 気分が優れない?」凄い勢いで何かが近づいてくる音がする。
(こ、怖い…!)
まるで本当に予知したかのように、草陰から大柄な男が出てきた。
ただ一つ記憶と違うのは、サクラが前に立ちはだかったこと。
▶ KP情報(ここをクリック ※ネタバレ)
逃げる、隠れることもダイス判定により出来る。敵の存在を教えた場合、サクラも一緒に判定してくれる。しかし、怖がったり(サクラが守ろうとするため)、判定失敗の場合は敵との戦闘となる。
ダイスによりサクラに指示が出来ます。
1d6でどうぞ。▶ KP情報(ここをクリック ※ネタバレ)
戦闘の場合
1攻撃
2損傷 まるで痛みを感じていない。
3回避 次に来る危険をあなたは予測が出来る。
4必殺 次に何処から攻撃が来るのか、どうすればこの戦闘に勝利出来るのか自分には分かる。あなたは的確にサクラへ指示が出来るだろう。※戦闘終了
5投げ飛ばされる すぐに戻ってきます。
6庇う 庇ってくれる。3回戦うか PLがサクラを庇う宣言した場合、戦闘が強制終了。
▲庇った場合 愛情+5 疑心+1
強い衝撃に吹き飛ばされる身体を支え、サクラがブチ切れます。虹彩の色が変化し、倒した後は現代には無い装置で治療してくれます。▲戦った場合 回避 変化なし サクラがダメージを与えた時疑心+1 サクラが庇った場合 愛情+1 必殺 愛情+5
▲逃げる場合 愛情+1
→1d6 (1D6) > 6 判定は「庇う」
敵がサクラにも目もくれず、イアに飛び掛かるだろう。しかしサクラが直ぐに間に入りイアを庇った。
「サクラ……!」
「イア、隠れてて。絶対に守る」
(怪我の様子を確認する)まるで痛みを感じないように動きは全く衰えることは無い。
(痛みは出てないみたいだけど..….逃げた方がいいかな)
(でもここで逃げてもずっと追いかけてくるリスクはあるわけで)
「逃げるのもアリだと思うけど、サクラはどう思う?」サクラはイアの表情を読み取ったように、軽いジャンプで直ぐに隣に降り立った。
「おんぶか御姫様抱っこ、どっちがいい?」
「えっ///」
「気付いてるかもしれないけど、僕は人間じゃないみたいだから僕が運んだ方が早いよ」
「人間じゃないの……!? えっと、そしたらお姫様だっこで」
「分かった、しっかり捕まってて」速度は大男が追いつけるものではとても無く、あっという間に辺りは桜の森から大都会に変わった。
空には飛行船が浮かび、様々な国籍の人間が会話しており、見たことも無い食べ物が売られている。
「この世界は華胥の国、理想的で豊かな場所。だって、何かしたいことはある?」
「物を手に入れるのは無料で行えて、15:00にパレードが行われるみたい。今が12:00。何でもあるよ」▶ KP情報(ここをクリック ※ネタバレ)
1時間で1ターン
サクラの性格、JとPを決定する。 基本はPLの行動を見て学ぶ(自由に「PLしっかりしてるから反対のP、PLを導くからしっかりスケジュールしそうのJ」みたいでも良いと思う)
・スケジュールを決めてから行動する J
・その場で考えて行動する P
・今後の準備 J
・この場所で楽しむ P
「なんか全然雰囲気が変わったね」
「山奥から出たら大都会って感じだな」
「ね! 飛行船も飛んでるし、見るもの全部新しいよ」
「そうか、それは良かった。さっきみたいな敵が何時現れるか分からないから、今後、隠れる家は定期的に変えた方が良さそうだ。この付近の不動産はあっちにあるらしい」
「確かに。分からないもんね。無料ってすごいな~どうやって成り立ってるんだろう」
「見たところ、機械が多く働いているみたいだな」
「機械が働いて、人間は好きなことが出来るんだ! あっ立ち話もなんだし、まずは飲食店に行ってみようよ」
「丁度お昼か……この場所で一番近いのは、こっちだ」レストランに移動すると、そこはクルーザー気分で楽しめるコンセプトになっていた。皆楽しそうに食事をしている。
「おぉ~!お洒落! 料理も見たことない感じかな。ゼリーの見た目をしたコース料理味とか!」
「多分、好きな物が出てくるよ」
「そっか、ロボットが何でも作ってくれるんだもんね」
「イアは何が好き?」
「食べ物は結構なんでも好きだよ。でも迷っちゃうね」メニューは空中に浮かぶタイプのもので、ロボットの店員が運んでいる。
「すごい......見る場所全部楽しいな。窓から覗く景色も綺麗だし」
ロボット : 「お食事はお決まりですか? もし選べないようでしたら気まぐれメニューもありますが」
「あっそうそう、メニュー選ばないとだよね。えっと暗闇で輝いて、機械仕掛けのような見た目で動いて、透明感のあり、味は甘く、しょっぱさがあり……それでいて軽やかで…...重さもあり……私とサクラをイメージした料理をお願いします!」
ロボット : 「しょ、承知いたしました。腕によりをかけて作りますね!」
ロボットは何処か焦っているように見えた。
「へへ、難題言っちゃった。ロボットも困ってたかな」
「僕たちをイメージした料理か。イアは色んな事に感動して夢中になるな、見ていて飽きないよ」
「やりたいことが沢山で困っちゃうな。パレードまでの3時間なんてあっという間だね」
「他にも何かしたいことが?」
「うん。楽しさをとるか、今後のために備えるかで迷ってるんだ」
「それは良いな。パレードまでは楽しんで、パレードの後に備えるのはどう?」
「いいね」ロボット : 「オオマタセシマシタ!!」
「は、はやい!」
そこには注文通りのものが出来上がっていた。食べ物にもかかわらず動き、しかしクリア素材で出来ていて、食べ物の周りに雲が浮き、飾られたグミは良く分からない質量で出来ているのかとても重い。全てを彩る料理の上にはガラス飴で出来た二人がまるで踊っているかのように手を取り合っていた。
「すごい!ここまで見事に注文通りとは!」
「わ~ガラス細工も素敵だよ。あ、それ良いね! パレードの後に時間があるか聞こうと思ってたんだ」
「良かった。ガラス細工食べ辛いな……イアがとても可愛いから」
「えっ//」
(ガラス細工がだよね……?)
「冷める……かは分からないけど、食べようか」
「そうだね!」味は勿論、この世のものとは思えない美味しさであった。
「ここリピート決定ッ……!」
「気に入るお店があって良かった。また来よう」
「うん!」レストランの中央では生演奏がされ、お腹も心も満たされたところで、食事も終えて二人は外に出る。 時計は13時を指していた。
「居心地が良すぎてずっと居れそうだったよ。次は~飛行船乗ってみたい!」
「飛行船、今後の移動手段の参考にもなりそうだし、良いな」軽い持ち物検査の後、飛行船に乗り込む。
(外の様子を確認)
一番初めに見た桜の森と大都会は意外と離れており、サクラの移動速度は異常だったと分かる。また、更に遠くにも色々町があるようだった。
(やはりサクラは人間じゃないんだな)
「どの町も全然雰囲気が違うんだね」
「そうだね」サクラは何も感じないような表情でただ外を見つめている。
「楽しい……?」
「……楽しい? 楽しいって、何?」煽っているわけではなく、その感情そのものを理解していないようだった。飛行船内は意外と揺れはせず、幻想的な景色が横に流れていく。
「心がウキウキする感じ?」
「ウキウキ……僕は、イアが生きていれば楽しいってことかな?」
「うーん近いようで違うかも?」
「イアはどういう時、楽しいって思うの?」飛行船が徐々に高度を落とし始める。街はパレードの準備のためか、灯りが少しずつ消え始めていた。
「さっきの食事も一緒に話して楽しかったよ。あと料理の味も見た目も面白くて楽しかった! 楽しいは、ポジティブになって気分が上がる感じかな……?」
「心の温かさにプラスして、テンションも上がっちゃうみたいな」
「……感情を説明するのって難しいね」
「そうか、確かにイアはずっと楽しそう。つられて自然と口角が上がりそうになる。これが楽しいの正体かな」サクラは今度は小さく笑ってみせた。
「!」
「そうそう笑顔になっちゃうの」
「イアが楽しくしてくれたんだね」
「違うよ、二人でいたから楽しいんだよ」飛行船は少し揺れて、完全に停止した。乗客が降り始める。
「二人で……いたから」
乗客をみる →CCB<=75 【目星】 (1D100<=75) > 14 > スペシャル
イアが辺りを見渡すと、ロボットも居るが人間以外の種族が多く見える。皆楽しそうに飛行船から降りていく所だった。また、敵対している存在も居ないようだ。
降り立つと時計は14時を指している。辺りは不思議と薄暗くなってきていた。
「そろそろパレードが近いね。最後はサクラがしたいことしたいな」
「僕がしたいこと? したいこと……難しいな」
(しばらく答えを待ってみる)
「不動産に先に行くのはどう? パレードの後、疲れたら休めるように」
「お店が閉まっちゃうかもしれないもんね」
「うん、イアの体力がどれくらいあるのか、まだ理解出来てないから」
「今のところ全然大丈夫だよ! アドレナリン出てるし!」
「それは後からドっとくるんじゃ……まぁ運べるから関係ないけど」不動産へ付くと、様々な家が簡単に契約出来るようだった。
「セキュリティー面は重視するとして、他に気にするところは?」
「転々とするんだよね?」
「そうだね」
「色んな場所を試せるとしたら……スパイ映画のような部屋がいいな!扉と思えない場所が扉になってて、乗り込んだら地下へエレベーターが続くみたいに!」ロボット : 「お目が高い、此方の物件はいかがでしょう?」
まさにそのような物件だ。
「素敵……」
ロボット : 「勿論隠し部屋も、武器も備えておりますよ」
「カッコイイ! 今後のためにもこの部屋が良いと思わない?」
「……完璧に近いんじゃないか」
「そうだよね!」契約を終えて外に出るとパレードが行われていた。外には出店があり、人々で賑わっている。
「宙にオレンジ色の灯篭が浮いてるね」
「何のために行われているのか不明だな」
「花火みたいに人々を楽しませるための催しなのかなって思ったんだけど。サクラは別の意図を感じる……?ちょっと待ってね」CCB<=70 【アイデア】 (1D100<=70) > 68 > 成功
置いてある看板で、この祭りは春に行われる収穫を祝うものだということが分かるだろう。灯篭は現代の花火と同じ役割をしている。サクラは記憶が無いため、無感動かつそれが何故人々を喜ばせるのか理解してないようだった。
「イア、怖い?」
「ううん、追ってからの注意は必要かなって思うけど」
「人の多い所が不安なら、部屋に戻ろうか」
「もう少し見ていこうよ。とても綺麗な場所だから」
「じゃあ、はぐれないように」サクラが手を差し出している。
「うんっ」
(手は硬いのかな…?)
(温度はあるのかな)サクラの手は暖かく、年相応の柔らかさだ
(本当の人間みたい...…)
(一応不穏な音はしないか確認しておこう)→CCB<=70 【聞き耳】 (1D100<=70) > 22 > 成功
様々な異国の言葉もするが、これもまた敵意を感じなかった。するとすぐ近くでサクラの外見を褒める少女の声もする。
「うぃうぃ※サクラの腰を小突く」
「どうかした?」
「モテますね~」サクラはイアの危険の察知以外、あまり周りを気にすることはないようだ。
(何か……だる絡みしちゃった)
「この外見が良いなら、たぶんイアが好きな外見になってるんじゃないかな。今までの記憶から、イアのために僕が在るみたいだから」
「私のために……?」
「僕はずっとイアを探してた。それが僕の生きる意味だったから」
「そっか……」「気温も下がってきたから、部屋に戻ろうか」
「そだね」
(サクラも私も何者なんだろう。。。)いつの間にか時間も過ぎて夜だ。
「晩御飯作るけど、何が良い? 露店で買って帰っても良いし」
「いーや、振る舞わせてよ。私も実は少しだけ作れるよ!」
「イアの料理……食べてみたいな」
「冷蔵庫のもので美味しいの作るよ!」→CCB<=60 【料理】 (1D100<=60) > 41 > 成功
既に備え付けられている冷蔵庫には腐らない食材が並んでいる。イアが中を確認すると、なんとかあるもので料理はできそうだった。
「はい! チキンカレー! どぞ!」
「……いただきます」サクラは一口頬張ると目を輝かせる。
「! 美味しい?」
「美味しい……」
「やったー!」
「ありがとう、すごく美味しい。これなら鍋ごと全部食べられる」
「嬉しい……!また作るね」もぐもぐとあっという間にサクラのお皿は空っぽになった。
「今は20時か~お風呂入って、少しお喋りしたら眠ろうか」
「……僕は眠らない。いや、眠れないのかな? 眠ったことが無いんだ」
「今までずっと起きてたの?」
「そうだね。だから、リビングのソファーで待ってるよ」
「サクラは私が目覚めるまで何してたの?」
「サクラを見つける前は機械の学校のような場所で特訓していたし、見つけた後はずっと側にいたよ」
(シャットダウンボタンとかあるのかな?)サクラをよく観察してみる → CCB<=75 【目星】 (1D100<=75) > 49 > 成功
サクラの鼓動の音も、陶器なような肌も、質の良い筋肉もあるが、目立って機械のようなパーツは見当たらないだろう。
「?」
(ご主人様に従事するタイプのロボットなんだろうか)
「遅くならないうちにお風呂入ってくる?」
「うん、シャッと入って、シャッと出てくるから」
「あ、サクラはお風呂入る? 汗はかかないけど、汚れるかなって」
「あまり汚れないけど、イアが嫌がらないように入るよ」
「嫌がらないけど、土埃とかで汚れちゃうからさ」本棚のスイッチを押すと、源泉かけ流しの流れる温泉がそこにあった。
「スパ~イ」
(シャッと入りシャッとあがる)サクラも同じタイミングで入ったようだった。濡れた髪をタオルで擦っている。
「人間は寝て夢を見るって聞いた。イアが寝るとき、何ていえば良い?」
「みゅ~ かな? これはね、本当に大切な人にしか言っちゃダメなんだけどね」
「そっか。みゅ~、イア。良い夢を見れますように」
(サクラのみゅ~が聞きたくて嘘言っちゃった)
(良いな~。でも悪いや、別のところでやったら恥かいちゃうかもしれないし)イアの寝室は一番奥まった場所にある。そこで寝っ転がって今日あった出来事を振り返るだろうか。
しかし、それからどれくらい経っただろう。何時まで経っても眠気は訪れない。慣れない経験により意識が覚醒してしまっているのだろうか。するとコンコンと扉をノックする音が聞こえた。
「入っても良い?」
「うん!」サクラは静かに入って、ホットミルクをサイドテーブルに置き、ベッドの端に腰掛ける。
「眠れないから嬉しい」
「寝れない? それじゃあ少し話をしようか」
「さっき嘘ついちゃったんだ」
「嘘?」
「うん。寝る前は「おやすみなさい」だよ。親しい人は「おやすみ」かな」
「嘘になるのかな。二人の中の言葉だから、それが真実ともいえる。イアはおやすみか、みゅ~どっちがいい?」
「私の前だけだったら、みゅ~が良い。なんか特別だし、可愛いからさ」
「じゃあ嘘ついてないよ」
「サクラが将来困ったら嫌だから、本当のことから伝えたかったんだ。みゅ~は応用編だから」
「僕はずっとこのままだと思ってたけど」
「うん……?」
「僕は、他の誰にもお休みを言う日は来ないよ」「イア、一つだけ思い出したんだ」
「なに?」
「と言っても御伽噺で、何にも役にはきっとたたないけれど、聞いてくれる?」
「もちろん」
「別の世界で言う、華胥の国は昼寝をしているときに遊んだ理想郷のことなんだって」
(この場所みたい……)
「もし別の世界から意識的にこの場所に訪れるなら、逸話にある太陽の花束を持って昼寝をすると来れるというお話があるんだ」
「花束を持って寝ると華胥の国に来れるんだ。華胥の国って私たちが今いる場所を指してるのかな」
「それは分からないけど、もしこの世界のことなら、例えば異世界に飛ばされても、この場所に戻ってこれるってことじゃないかな」
「もし僕たちが離れ離れになっても、華胥の国でまた会えると良いね」
「うん!太陽の花束ってどこにあるんだろう?」
「ヘリクリサムの花の別名が太陽の花だって。それが何処にあるのかまで分からないけど」
「データでは何故か見当たらないから、今度図書館に探しに行こうか」
「図書館なら秘蔵の本が眠ってるかもしれないもんね」
「そうだね」そんな話をしているうちに、意識は段々夢の中へ消えていった。
サクラは御伽噺でイアを眠らせたかったのかもしれない。 -
02.仲夏
この街で過ごしていくうちに分かったことがある。それは、この世界はとても科学が進歩しているということ。
皆自分のための機械を持っており、恐らくこのサクラもそのうちの一体だろう。幸い社会保障がしっかりしており、機械が働くので子供だけでも生きていける。
初めに出逢った敵は、姿形の違う別個体が表れ、定期的にこちらの命を狙ってきた。
記憶が戻れば何時かその理由も分かるのだろうか?
学校に通ったり、子供の職場で過ごしたり、居場所を転々としながら過ごしていると、サクラは機械独特の美しさからか、子供から大人まで人気があった。
しかし、サクラは自分と離れないので、とても付き合いが悪い。するとサクラの入れない学校の御手洗いでクラスメイトが話しかけてきた。
※胸クソ注意
▶ KP情報(ここをクリック ※ネタバレ)
心を鬼にして暴言を吐きます。
サクラが怒るくらい。
クラスメイト : 「イアさ~ん、サクラくんを独り占めしたいの? ただの機械なんだからさ、貸してくれても良いんじゃない? そしたらあんなことお願いしちゃおうかな~! ッキャー! って、ねぇ~聞いてるの? あんたに言ってんだよ」
「ただの機械じゃないよ」
「っあ。耳ついてたんだ~? 何、口答えする気?」
「貴方も自分の機械が大切じゃない?」
「はぁ? 機械はただの機械でしょ? 綺麗ごと? キモいんですけど。まぁ、サクラくんみたいなホンモノ感は流石にチートだけど、違法製造なの?」
(他の機械はサクラと違うのか…...。確かにお店で働くロボットは言葉がカタコトだったな)
「私はサクラが大切だから"貸す"なんて出来ないよ。一人の生命体だと思ってるから。貴女がサクラと信頼関係を築いて、サクラが一緒に遊びたいと思ったら一緒に過ごせばいいと思うよ」信頼関係を築けないことにイラだっているのだろう。更に殺気立っている。
(オーマイガー)
「出来ないことをわざと言って自分は安全圏ですか。転入してきた時から、貴方のその何でも楽しいです、感動しちゃいますっていう純粋そうなフリが気持ち悪い、大嫌い!! そのピンクのアホみたいな髪も。誰もあんたを必要としないからさ、さっさと転入してよ!!」
(ガーン!)クラスメイトが一歩近づく。
相手の手が身体に触れる前に激しい頭痛が起こる。
これは過去にもあった予知だ。脳裏に流れた映像は、目の前の彼女がピクリとも動かなくなり床には血だまりが出来ている光景。
そして血の匂い。自分に攻撃をしたら、目の前の人間は殺される。そう理解するには難しくなかった。
SAN値チェック 0/1D6
「CC<=70 【SAN値チェック】 (1D100<=70) > 83 > 失敗」
「1d6 (1D6) > 4」system : [ イア ] SAN : 70 → 66
(逃げられそうかな…?)
「CCB<=82 【回避】 (1D100<=82) > 94 > 失敗」その衝撃に立ち眩みを起こすと、予測していた通り身体をドンと押され体制を崩す。
しかし後ろから支えられ地面に身体をぶつけることは無かった。
「?」
「イア、大丈夫? こんなところに入ってきてごめんね、嫌な胸騒ぎがしたから」▶ KP情報(ここをクリック ※ネタバレ)
PLと同性の場合、サクラは係の仕事などで強制的に離れています。
▲避ける場合
その衝撃に立ち眩みを起こすが、何とか耐えて最小の動きで躱す。相手は元より知っていたかのように避けたことで少し不気味に思ったようだ。すると、後ろから聞きなれた声がする。
「イア、大丈夫? (異性の場合:入ってきてごめんね)嫌な胸騒ぎがしたから」▲逆に攻撃する場合
その衝撃に立ち眩みを起こすが、何とか耐えて最小の動きでカウンターを入れる。相手は予想外の動きに成すすべなく、反撃してきたことに狼狽えている。 「イア、大丈夫……そうだね。 (異性の場合:入ってきてごめんね)嫌な胸騒ぎがしたから」
▲ここから説得ターン
説得できない場合は殺害します。殺害した場合、疑心+1。証拠隠滅して次の場所に移り住みます。今回は愛情度が高いので普通にダイス振らずに説得したという流れになっている。
ハっとして後ろを振り向けば、サクラの瞳の色が赤くなっている。
「サクラにお願いがあるの!」
「‥‥何?」
(何とか予知を回避しないと)
「私をまた運んで遠くに連れてって……!」
「でも良いの? ……イア、要らないよね? こいつ、この世に要らないよね」
(サクラが指名手配されちゃう……)
「カワイイ嫉妬だから」
「……」
「お願いお願い!」
「……。イアが嫌なことは嫌だから、それに、イアを怖がらせたくないし。今回だけ許してあげる」
(ほっ)*
帰り道、サクラは少し考え事をしているようだ。
「なーに考えてるの?」
「……え、ああ。説明するには、少し長くなっちゃうな」
「いいじゃん、沢山話そうよ」
「……分かった。イアの周りの人間関係を考えたら、平穏のために好感度を上げとく必要性も感じるし、……転々とするから、その度に新しい場所に行くのも良い。色んな場所を知れるからね。でも、僕を知ったところで理想を崩してしまうくらいなら、理想を綺麗なままで守ってあげるのも優しさなのかな」
「人を殺したり、感情が欠如していたり、そういうことを知っているのはイアだけで良いんだ。……イアはどう思う?」▶ KP情報(ここをクリック ※ネタバレ)
サクラの性格 → EとIの決定
質問に答えない場合はダイスを振って1(E)、2(I)でランダムにて決定する。
自分の気持ちを大切に I
和を大切にするべき E「人間関係か……(この世界は色んな種族がいるから種族関係...?)」
「私もそれは結構難しいと感じてるんだ」
(私の気持ち、社会の常識、サクラにはどちらを伝えたら良いんだろう)
(いや、サクラのためになる答えがいいな)サクラの目に夕焼けが反射する、長い睫毛は影を落として、此方から目を逸らされることは無い。サクラは何時までもイアの言葉を待っているようだった。きっと、彼は明日になっても待つだろう。
「サクラはカッコイイから優しくしすぎたら、勘違いさせちゃうと思うんだ。後から思わせぶりだって、余計な恨みをかうみたいな。でも人には親切であって欲しい。困ってる人がいたら助けて欲しいし」
「だから、相手を尊重はするんだけど、相手からの好意を感じた時に、答える気がなかったら、それとなく伝えてあげて欲しいんだよね」
「僕にはイアが居るって答えてるよ」
「顔が夕焼けみたいになっちゃうよ」「じゃあ作戦があるんだけど。いや……どうかな~あまり変わらないかも知れないけど」
「作戦?」
「うん。次の町ではサクラは人間ってことにしよ」
「人間……」
「いや、やっぱりいいや!」
「?」
(それで私と付き合ってることにしようって思ったけど、なんか違うな……)陽が傾き、ふたり分の影が地面に長く伸びている。遠くでは日暮の鳴く声がした。
(仮が嫌なのか。。。)
百面相をするイアにサクラは少し笑ってから、イアの手を握った。
「ちょっと、暗くなっちゃったから、もっとシンプルな質問をしても良い?」
「うん!」
「イアは遊びたいとき誘うタイプ? 誘われるのを待つタイプ?」
「基本は待つタイプだけど、親しくなったら誘うかな」
「そうか……僕からも誘うから、そしたら沢山遊べるね」▶ KP情報(ここをクリック ※ネタバレ)
上記はE判定
(誘えない場合)I「そしたら、沢山誘うね。僕がずっと誘ったら、イアを独り占めできるかな。……なんて、イアの独占は勿体ないね」
「ね!色んなことしよ。洋服屋とかも巡ってみたいし」
「今度行こうか」
「うん!」(さっきは恥ずかしいこと言っちゃったな)
(自分の考えを語りすぎたかも。でも、まぁ良いか)
(サクラになら何でも話せる)「晩御飯、手作りが良い? 今日は外食にする? それともまた作ってほしいって言ったら、負担かな……バターチキンカレーまた食べたいな」
「サクラが希望を言ってくれるなんて! もちろん、作るよ!」
「あまり他のものは欲しいって思わないけど、イアの料理は食べたくなる」
「そして私は希望を叶えてあげられることが嬉しいのです」
「バターチキンカレー作りまーす!」CCB<=60 【料理】 (1D100<=60) > 11 > スペシャル
プロ顔負けのバターチキンカレーが食卓に並ぶ。多分これを作った人間は神なのだろう。
「美味しい……!」
サクラも目をキラキラと輝かせていた。
「自信作できちゃった。すごく美味しそうに食べるね」
「美味しいからね」
「僕は料理だけじゃなくて、沢山のことをサクラから貰ってる。楽しいも、嬉しいも、たぶん怒りも、全部サクラが教えてくれた」
「私もだよ。目が覚めて出会ったのが、サクラで良かった」
「……そう思ってくれたのなら嬉しいな」
(イア、これが幸せという感情ですよ……と)我が家に帰り和やかに食事をしていると、ニュースが流れていた。この世界の統率する者が機械になったという。
「え!?」
サクラはイアの表情を読むかのようにじっと見つめている。
「イアはどう思う? そんな世界」
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怖い、恐ろしい 疑心+1
優しい答え 愛情+1
「機械を作った1人の命令じゃなくて、その機械への命令は大衆が望む結果に導くように出来ていれば良いな」
「多分学習型のAIだろうから、機械が考える感じかな」
「それって凄くいいね」
「そう? イアにとって、理想的な世界ってどんな世界なのかな」▶ KP情報(ここをクリック ※ネタバレ)
「私の理想的な世界か~。この世界の機械は安心感があるし、この世界は結構、理想的かも。人が何にも悩まされず、本当に自分のやりたいことが出来る感じ」
「理想的……イアと出会った場所がそんな場所で嬉しいな」
「へへ。……あとは永遠が欲しいかな」
「永遠?」
「うん、私は人間でサクラは機械でしょ? 私には寿命があるから永遠になりたいな」
「イアが永遠に生きるか、僕が一緒の寿命になるなら、どっちがいい?」
「世界の人達が全員好きなだけ生きられたら良い。そしたら皆幸せな気がする」
「……イアは優しいね。何時も」サクラが優しく微笑んでいる。
「みんなそう思うよ…!// そういえば図書館行き忘れたね」
「じゃあ明日行こうか」
「うん!」貴方は寝るために自室に戻る。階段を登るときにサクラが手を振っていた。
「みゅ~、イア。良い夢を見てね。また明日」
「サクラもみゅ~、また明日」
「みゅ~が寝る前の掛け声になったね」
「確かに眠そうな声だね」
(声のニュアンスまで理解してるとは。もうこの世界にだいぶ馴染んだな) -
03.秋愁
初めて出会った時は桜の降る季節だった。それから季節が移り変わって夏が来て、そして秋になる。
逃げて隠れて代り映えのない生活。ネットの海の情報は既にあらかた調べ終えたので、データ上以外の情報を国家図書館にて探ることにした。落ち葉積もる道を歩きながら他愛のない会話をする。
「イアに記憶が無いように、僕もまだあまり良く分かっていないんだ」
「ね、どんな記憶が眠ってるんだろう」
「良い記憶だと良いんだけど。記憶を取り戻したら僕たちは一緒に居られるのかな。それとも君が狙われ無くなれば、僕の役目は終わるのかな」
「役目が終わっても私たちは変わらないよ」
「そうなのかな。そしたら嬉しい」そこで何時もの頭痛がする。目の前が薄暗くなり、映像が脳裏に浮かぶ。
ー ……過去の僕には何も言わないで。
ただ、何時もと違うのは命が狙われるという内容ではなく、遠くに激しい爆発音。そして崩れ落ちる空間の中で、サクラに狭い空間に閉じ込められるというシーン。
そんな記憶だった。
「イア、大丈夫? 何時もの予知?」
さりげなく道の端の安全な所に手を引かれ、建物の影で人から見られない(狙われない)場所に移動をする。
機械でも成長するのだろうか、少し見上げるほどの身長はあまり変わったようには思えないが、サクラの表情の違いが時間の経過を感じさせた。
「うん...…遠くで爆発音がしてた」
「爆発音? 何も聞こえなかった。それは予知の映像の話かな」
「そう、予知......未来の話だよ」
「そっか。分かった。無理しないで、平気になるまで背中貸そうか」そう言って小さい子供にするようにしゃがんで背中を見せる。
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サクラが閉じ込めていることを言うかどうか
・言う 疑心+1
「君を閉じ込める? 僕が。……そっか、じゃあ」
そう言って小指を立てる。
「約束、絶対に君を傷つけない。……ねっ」・言わない 愛情+1
予知に目ぼしい映像があるか→CCB<=75【目星】(1D100<=75)>10>スペシャル
遠くで何時もの異形がおり、サクラの表情は何処か悲しさと嬉しさがあるものだった。その映像で何か思いつきそうか→CCB<=70【アイデア】(1D100<=70)>15>成功
その様子から、その場面では時間があまりないことも分かるだろう。*
国家図書館は大きなガラス窓の開放感のある空間になっており、きっと科学が進歩しているこの世界では、本の日焼けにも対応されたガラスになっているんだろう。
「バラバラに探そうか」
重要な本は奥の禁書エリアにあるはずだ。サクラの偽造で入れるとしても、その中の無数にある中、調べることは骨が折れるだろう。
ドキドキダイス運試し
・直観を信じて探す場合 ダイス1/2 1が出たら見つかる
・地道に探す場合 1/6 を三回振って3以下が出たら見つかる▶ KP情報(ここをクリック ※ネタバレ)
NとSの決定
・直観を信じて探す場合 N
・地道に探す場合 S
「調べたいのは”ヘリクリサム別名:太陽の花”、”華胥の国”、”異形の存在”」
3d6 (3D6) > 17[6,5,6] > 17 →失敗
「沢山調べたかったんだけど…全然見つからないな」
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愛情がある場合、一緒に探してくれる。 サクラの愛情が5以上の場合は確定で見つけてくれる。今回はこの時点で6だったので確定演出。サクラの疑心が5以上の場合は見つけられない。(愛情が5以上の場合は愛情が優先される)
見つけられなかったので、サクラの所に向かうと、何点かメモをしている所だった。
「良い物あった?」
「全然......何の成果も得られませんでしたッ!」
「僕も調べたんだけど、ここらへんかな」・ヘリクリサムとは、キク科・ムギワラギク属に分類される多年草の総称。
・その中でも華胥之国では、悪魔との契約により、記憶と魂を引き換えに人を生き返らした逸話から、記憶の回復効果の持つ非合法の薬の別称として使われている。「ヘリクリサム。記憶の回復効果の持つ非合法の薬の別称……ヘリクリサムは非合法の薬だから、国の管理から遠い、治安が悪い場所にあるだろうな。荷物をまとめたら一緒に行こうか」
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準備度によって、この後に起こる戦闘の難易度が変化する。
「なんの準備が必要かな」
「治安が悪いんだもんね」
「あの道は飛行船が使えないからバイクとかになると思うけど、もし運転任せてもらえれば運転する」
「すごく助かる!」
「良かった、俺は武器かな」
「缶詰に水分、ナイフと銃。防弾チョッキを着込む」二人はバイクで運べる分だけ詰め込むだろう。荷物をまとめ終わると、何時もの夜が来る。
晩御飯を食べ終わるとニュースが流れた。
テレビ : 「最近機械の暴走が増えてます。チップのコアを破壊することで暴走が止まりま」
そこでテレビが消される。
「怖くて寝られなくなっちゃうよ」
「怖くても身を守れる情報は欲しいから(そう言ってテレビをつける)」
「‥‥」何時からだろう。表情に変化のなかったサクラが色んな顔を見せるようになったのは。それでも今の表情は何を考えているのか良く分からない。再びつけたテレビからは身の安全の確保を呼び掛けている。
「機械は沢山学習していくから、いつかは人間の範囲外の行動もすると思うの。暴走ってどこまでを指すのかな、周囲に危害を加えたら?」
「多分、そういうことだと思う」
「機械には安全装置が備えられてるはずだけど、安全装置以上の命令が機械の中で行なわれるってこと?」
「これはもう想像だけど、機械は忠実な筈だから、何か別のものが起因しているんだろうね」
「なるほど」会話が終わったのに、サクラはまだ何か話したそうだった。
「イア。一つお願いがあるんだ」
「なに?」サクラがイアの手を取って、サクラの心臓に押し当てる。そこは確かに振動をしていた。
「……僕が暴走したら、コアを破壊して欲しい」
「コアは機械によって場所が違うんだけど、僕は心臓にある」
「サクラも暴走しそうなの? 暴走するかもしれない予兆を感じるの…...?」
「分からない、その予兆はまだないけど。イアを傷付けてしまったら自分が許せない……イアが傷付くのだけは嫌なんだ」
「私も同じだよ」
「イア……はそう言ってくれるって分かってた。変な話をしてごめん、でもそう言ってくれてありがとう」
(私はサクラを守りたいし、サクラは私を守りたい。これは多分平行線だよね)夜が深まり、静かな部屋は時計や外の車などばかりで、二人以外の音だけがする。
「二人で生きれる方法を探すから、サクラも諦めないで探して欲しいな」
「……分かった」
「そろそろ向かう?」
「一度寝よう、イアが風邪ひくといけないから。……みゅ~、イア。良い夢が見られますように」
「うん。 みゅ~」サクラが眠ることは無い。自分が目覚めると何時もリビングの椅子に座っている。
「ねぇ、お願いがあるんだけど」
「何?」
「テレビを見て、やっぱり怖くなったから、サクラの膝の上に私の頭置いてさ、毛布かけて寝て良い? そしたら安心してグッスリだと思う」普段驚かないサクラが面を食らったかのように驚いている。
「……え? 僕が怖くないの?」
「え? 怖くないよ」
「あんなニュース見たから、僕も同じ機械で、てっきり怖がらせているかと……それとも、僕がそう考えていると思ってのイアの優しさなのかな……」
「怖いのはサクラがいなくなっちゃうことだよ」
「……そっか」サクラは幸せそうに微笑んでいた。
04.厳冬
バイクでどれくらい進んだだろう。街灯も少なくなり、あれほど整備されていた道も徐々に進み辛くなる。狭い道を進めるようバイクに乗るが、厳しい冬の寒さが肌を刺すようだった。するとバイクが止まる。
「寒いよね」
「もう冬だね、バイクだとちょっと」上着を肩にかけられ、じわりと身体が暖かさを取り戻す。振り返れば反映した街は楽し気に光を放ちながら輝いていた。
「少しあたたかいと良いんだけど」
「ありがとう……」ー すると、次の瞬間。
美しく整えられた街の中央から激しい爆発音。刹那、眩しすぎる光に目を白黒させていると地面が大きく揺れる。
「機械の暴走だ、……捕まって」
「うん……!」サクラはバイクの前にイアを乗せ、隠すようにして走り出す。風の冷たさと一緒に街がどんどん遠ざかる。
途中高速に入る前、機械による検問で渋滞が起こっていた。どうやら人間は郊外へ出られないらしい。
AIの自動運転は死の香りのする街へ引き戻している。
「……流石に不味いな」
銃声と鮮血。フラッシュと爆発音。
向こう側に行くには、ここにある数百の機械からの危害を潜り抜けるか、隠れながら別の道を探すか。
(バイクで隠れるのは難しそうだから、正面突破しようかな)
「分かった、しっかり捕まってて」
(ちゃんと避けられるように私も見ておくからね)二人は潜り抜けることを決意した。
★ 潜り抜ける場合
武器の量が多いため、6回ダイスを振ったうち、回避のハード成功が2回出たら抜けられる。それ以外はダメージ。
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★ 隠れながら別の道を探す場合
判定が隠避になる。難易度は準備した食料の量で決まる。(食べ物の数 多:6回 普:5回 少:4回)「行くぞ……!」
→CCB<=82 【回避】 (1D100<=82) > 69 > 成功 →ハード成功じゃないので失敗
異形が飛び出して突撃してきたが、サクラが覆い被さり防いでくれた。
「ッぐ、……体液が漏れ出してる……大丈夫。周りは怖いから、目を閉じていて」
「ごめん、ちゃんと教えてあげられなくて……ううん、今度はちゃんと見るよ!」CCB<=82 【回避】 (1D100<=82) > 25 > 1回目の成功
激しい頭痛、これはもう何度も見覚えのある光景。自分には敵の攻撃が何処に来るのかも分かる。
(よかった、成功。今のうちにさっき怪我したところを手当しなきゃ)後ろを振り返り体液が出ている場所を手当
CCB<=75 【応急手当】 (1D100<=75) > 91 > 失敗あまりの光景に手が震えてるみたいだ。
(サクラ大丈夫…?)
しかしその手を見るサクラは優し気になった気がする。
「指示ありがとう、全然平気だ」
「今度も、ちゃんと見なくちゃ」CCB<=82 【回避】 (1D100<=82) > 37 > 2回目の成功
的確に指示を出せば最早敵など初めから居ないかのよう。イアの的確な指示でサクラは次々と潜り抜ける。
(ホッ......死線を潜り抜けた!)
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失敗の場合
・攻撃が当たる「ッぐ、……体液が漏れ出してる……大丈夫。周りは怖いから、目を閉じていて」
・(疑心が上がる)サクラの瞳の色が赤く染まっている。「頭…イタ……なんだ、これ……」・どの機械より前に出た時、発砲された弾が当たったのか、バイクが転倒した。全身を守られて、自分は無傷だがサクラの片足は折れている。
「イア、僕は大丈夫だから、先にここを目指して走って。ここなら安全だから。必ず追いつく、……約束」サクラが地図を渡す。
自分がここに居てもサクラは戦い辛いだろう。安全地前まで離脱。*
道は二手に別れ、何時の間にか空には黒い穴がぽっかりと口を開けており、そこから無数の見たことも無いものが降り立っている。
この場所も危うくなる前に、記憶回復の薬を探すべきか、それとも地図の場所へ向かうべきか。薬と安全地はほぼ逆の位置にある。
「イア、どっちへ行こうか」
(安全地に向かって生き延びても、さらに先の未来を考えたとき……)
「私は薬を取りにいきたい」
「行こう。捕まって」
「待って、少し落ち着いたし...…今度は治療できるかも」CCB<=75 【応急手当】 (1D100<=75) > 69 > 成功
「少し手当が遅れたから完璧とはいえないけど」
「ありがとう、イア。コアが破壊されなければ大丈夫なのに、イアは何時も僕のことを沢山考えてくれるね」
「当たり前でしょ。サクラが大切だからね」
「……優しいな」バイクがゆっくりと止まると、そこは無人の植物園だった。日が暮れる前に探そう。
「好きな花を持って行って良いって、店員さんが」
そう言うサクラ。目線の先に店員は見えなかった。しかし、直観するだろう。見えてるフリをした方が良い。
(この騒動で店員さんはいないのかな?ここはロボットが運営してる大都会じゃないから普通にお金が掛かるかもしれない。でも緊急事態だから……)★調べられる場所 1人の場合3か所まで(今回は2人居るので手分けして時間が半分になり、全部振れる)
・噴水近く
・外の庭園
・看板
・本
・棚「僕も調べるよ、何処から探そうか」
本 →CCB<=75 【目星】 (1D100<=75) > 59 > 成
・本 成功:ヘリクリサムを死者復活に使用する場合、あの世とこの世の境目にて生きかえしたい者の身体の一部と花束を備える必要がある。また、永遠に死を司るものに追われることになる。
(永遠に死を司るものに追われる……?最初にあった異形……)
(もしかして、私かサクラが既に生き返してたりするのだろうか….)
(そして予知......私は人生を繰り返してるのかな)
(でもどうしよう、どうしたらループを抜け出せるか......それが分からない)
「イア、どうかした?」
「あ、ううん本を読みこんでたんだ」
「そっか、安心した」
「観たことのないものばかり置いてるな……」
「本当だね、次は棚を調べてみよう」棚 → CCB<=75 【目星】 (1D100<=75) > 24 > 成功
・棚 成功:記憶の回復をする違法の薬、ヘリクリサムが入っていた。使用上の注意として、使用後身体が数時間動かないとある。
「記憶を回復する薬は手に入ったと」
「安全地に向かわないといけないから、今は飲まない方が良さそうだな」
(サクラにループしてることを伝えるのはもう少し後にしたいな。まだ考えがまとまってないし。それにサクラがもし知ってるけど隠してたとしたら、隠したい理由があるはず。伝えた後のことも良く考えてからじゃないと)
「次は何処調べようか」
「他も調べたいよね」
(サクラが私に伝えないのは、多分自分を犠牲にしようとしてるんだと思う)噴水近く → CCB<=75 【目星】 (1D100<=75) > 26 > 成功
・噴水 成功:噴水の近くの外の庭園に輝く何かを見つけるだろう。
「何だろう」
外の庭園 → CCB<=75 【目星】 (1D100<=75) > 40 > 成功
・外の庭園 成功:そこにはまるで初めから自分を待っていたかのようにヘリクリサムの花束が置かれていた。
「花束、綺麗だな。イアに良く似合ってる」
「本当? へへ」
「太陽とイア、良く似ているよ。イアの側にいると明るい気持ちになる」
「そうかな……ありがとう」
「この国に本当にこの花が存在するなんて知らなかったな」
「ヘリクリサムは記憶回復の薬にもなるし、華胥の国に行くための道具にもなるんだよね」
「そうかもしれない。そろそろ暗くなってきたな」
「最後に看板だけみていこう」看板 → CCB<=75 【目星】(1D100<=75) > 32 > 成功
・看板 成功:この世の文字では書かれていない。強い耳鳴りがする。
「ちょっと耳鳴りが......読めそう?」
「悪魔の植物園、そういうコンセプトかな」
「えっ!?悪魔…!?」
「疲れてきているのかも、そろそろ向かおう」▶ KP情報(ここをクリック ※ネタバレ)
PLが悪魔にたったいま気がついたり、悪魔のことが見えてないことに気付くと、悪魔は商品を渡さずにこのお店を隠してしまいます。悪魔がPLの様子に気付いたかどうか、幸運で判定します。
イア CCB<=65 【幸運】 (1D100<=65) > 88 > 失敗
その言葉に寒気が走るだろう。
「うっ」
サクラ CCB<=80 【幸運】 (1D100<=80) > 28 > 成功
一瞬何か見えたようだったが、サクラの身体に隠れて見えなくなった。
「大丈夫?」
「うん……」
「安全地はここから遠いけど、時間も無いからこのまま運転する。もし眠かったらベルトで巻くけど大丈夫?」二人を乗せたバイクは再び走り出した。
「大丈夫。移動時間中にサクラと色々話したいから」
(私の頭だけではループを解決出来ないかも。もう話して協力しなきゃ)
「サクラは何か私に隠してない…?」
「隠す……? あぁ……そっか。そうだね」
「話して欲しい。2人でなら解決出来るかもしれないから」
「ついたら説明するつもりだったんだけど。言葉が足りなかった」
「ううん、じっくり考えたくて。今ゆっくり聞かせて欲しい......」
「今から向かうのは、華胥の国とイアが元々居た世界を繋ぐ機械のある場所なんだ。国家図書館でこの場所が分かった。そして華胥の国、この場所は人じゃないものがいる場所。……イアは人間だけど、そのペンダントは何故か君の香りを隠している」
「私の香りを隠す必要があるの……?」
「この世界に人は居ないから、人間を見つけることは容易い筈だけど、追手がすぐに来ないのは、そのペンダントで隠されて、すぐには追えないからだと思う」
「私の香りですぐに見つかっちゃうんだ」
「そうだね。僕がずっと探してたイアは、この世界の存在じゃないと会った時に気づいてたけど、黙ってた。……怖かったのかな、住む世界が違うことで離れることが。でも、今はイアを失う方が怖い」遠くの景色が崩れていく、空は相変わらずぽっかりと大きな口を開けている。
「ちょっと考えを整理するね」
サクラはバイクを運転しながら静かに耳を傾けている。
「今、私達は何かに追われている。そして伝承にあった、永遠に死を司るものから"追われる"条件は、悪魔との契約により人を生き返らせた人」
「つまり、過去に私かサクラは悪魔と既に契約していて、どちらかを生き返らせている。その証拠に私もサクラも記憶がなくなっているし」「ずっとブツブツ言ってごめんね。どうしても良い方法を見つけたくて」
「沢山のことが起こったらきっと皆そうなるよ」
「そう……しかもこの先、すごく重要な選択が迫られる気がする。そしてその時は時間がないかも知れない。だから移動時間に情報をまとめておきたいんだ」「あの場所に行けばイアは助かる、だから安心して」
「あの場所……。サクラは私たちが向かってる安全地を、華胥の国と私が元々居た世界を繋ぐための機械がある場所って言ってたね」
「この世界に私と同じ人間がいないということは、この世界は私が元々いた場所ではない可能性が高い。つまり、この世界は華胥の国ということになる」
(サクラは私を元々いた世界に帰そうとしてる?)サクラはクスっと笑った。
「イア、悩みすぎると知恵熱出ちゃうよ」
手元には花束、指輪のペンダント、記憶回復の薬がある。
「記憶回復の薬って今飲んだらマズイよね? 目的地が遠いから大丈夫かな?」
「世界が崩壊しているから、飲むなら安全地が良いと思うよ」
「でも薬を飲んで動けなくなった時に、サクラを守れなかったら後悔するから」
「イア、本当は無理やり連れていくことも出来るけど、しないんだ。……イアの意思を優先したいから。そしたらその場所に移動しても、きっとイアの言葉を守ると思わない?」
「私の言葉を守る……」
「僕がイアを守るのは、命だけじゃないよ。イアの気持ちも守るよ。だから、安心して」
「うん、信じるね」遠くで激しい爆発音がする。そして崩れ落ちる空間。この光景は確かに見覚えがある。目指したその場所には一つの大きな機械が置かれていた。聞きなれない音はまるでその機械が呼吸をしているようだ。
「ここなら暫く持つと思う」
「ここが安全地?」
「そう、そして僕はイアが意識が無い間も絶対に無事だよ、強いからね」
「一緒に入れない?」薬は怪しげに光っている。サクラは何も答えなかった。
「もう少し、情報を集めてくるから……絶対だからね」
私は、薬を飲み干した。
05.真相
‥‥。
ある記憶。
小さい子供の頃、薄くなった記憶の中の葬式で、一人の人に出逢ったことがある。
お母さん : 「イア、何処見ているの? 付いてきなさい」
母に手を引かれ、その場所から離れるが、何故だろう。忘れることが出来なかった。雨が降っているのに、外に居たからだろうか。暫くすると、母はせわしなく移動している。
「イア、お母さん火葬場行ってくるから、周りの子と遊んできなさい」
記憶であるはずなのに、夢のように貴方は行動することが出来るだろう。
「うん」
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他の人とは話せない、話せても他愛のない会話で顔を思い出せない。
(庭にさっきの子いるかな)
子、というには少し大きく見えるが。庭先に出ると、不思議と雨に濡れていない男性がそこに居た。
「傘刺さないの?」
???「……俺のことが見えるのか?」
「えっ? うん、見えるよ。貴方は人じゃないの?」死神 : 「俺は死神。でも何で周りがこんなに泣いているのかも分からないんだ」
「まぁ、役割からしたら、分からなくても支障がないのだけど」死神は少し考え込むようにしている。
「なんで、人は離れると悲しいんだと思う?」
「難しいね。もう会えなくなると、その人と何も出来なくなるからかな」
「これまでの思い出が素敵で掛け替えがないからこそ、これからは何も出来ないんだって思うから」
「……そうか。イアも同じような経験が?」
「......うん」
「そうか。まぁ、言いたくなければそれでも良いが」
「言いたくないわけじゃなくて、上手く言葉に出来ないんだ」
「上手く言葉に出来ない。そういうこともあるんだな。……話せて面白かった。イア、これからも一緒に居ても良いか? 」
「いいよ、それは今日だけじゃなく?」
「あぁ。そうだな」それから私は……。
それから……死神にサクラと名前をつけた。
幾分も大人だったサクラの年齢は変わらなくて、いつの間にか同い年になった。
サクラはどんな時も味方でいてくれた。
「イア、御誕生日おめでとう。沢山教えてくれてありがとう……嬉しいか分からないけど俺の鎌で作ったアクセサリー。イアを守ってくれますようにって、魔よけのおまじないをかけたんだ」
死神は笑うようにも怒るようにも泣くようにも喜ぶようにもなった。そんなある日、初めて出逢った時のように雨の降る日。
最期の日が訪れる。
「イア、今日でお別れだ」
「お別れ……?」
「あぁ。イアと会って随分と楽しかったよ」
「私も楽しかった。でもどうしてお別れなの?」
「イアの寿命を延ばしていたんだ。本当は、イアは出逢った日には死んでいたから。俺の命と引き換えに生きれますように。今日がその日なんだ」その時、机の上にあった本が風によりページが捲られる。開いたページは「カルネアデスの板」だった。
そこで理解するだろう。サクラが死ぬことで自分は生きることが出来る。しかし自分が死ねば契約が解除されサクラは助かるだろう。
貴方はこの板を掴むだろうか?
*
この日、確かに何方かは死んだ。今生きているということは何方かが生きかえしたのだろう。つまり、無数に追ってくる敵は何方かが死ぬのを待っているんだ。
「イア、お帰り」
「ただいま......サクラ」
「……サクラはどうして私の寿命を延ばしたの? だって初対面だったのに…...」
「初めはただの興味だった。普通に話したのが初めてだったから。死神のことなんて、大抵皆怖がる」
「私も死神って聞いて最初ちょっと怖かったよ。でも話したら優しい人だって分かったから」
「そんな風に笑いかけてくれたから、何も無かった自分の中に感情が生まれたんだ。優しくして貰えると嬉しくて。イアに生きてて欲しい。俺に沢山教えてくれたから」「この機械は一人用だし、完了するのも時間がかかる。この世界が壊れたら、イアがいた元の世界にも戻れないかもしれない。イア、この崩壊を止める方法は一つしかないよ」
「どちらかが死ぬこと?」
「そう、そして多分。前回はイアが死んだんだ。だからイアが死んだら、俺はまた同じことをする」
「私を蘇らせて……繰り返すんだ」遠くから異形の声がする。徐々に壁がきしむ、この場所も長くは持たないだろう。サクラは漏れ出た敵を倒しながら、すべての電気を入れた。
「イア、僕を殺して。このナイフで心臓を刺してくれれば全てが終わる。刺したら、崩壊に巻き込まれないよう機械に入って」
銀のナイフを無理やり握らされると、嫌にそのナイフは冷えていた。しかし手を支えるサクラの手が温かい。それがサクラが生きていることを感じさせる。
ナイフが反射して自分の顔を映している。
(指輪はサクラがかけてくれた魔除けなんだよね......悪魔や死を除けられる…...)
「覚悟は決まった…?」
「うん」
「イア、最後に教えて。どうしてイアと離れると苦しいんだろう。他の人間には同じこと思わないんだ。でもイアのことは、守りたくて、この感情はなんていうの?」
「それが私もサクラに感じていた愛情だと思うよ」
「……そっか。そっか。ありがとう……。……過去の僕には何も言わないで」「華胥之国、……か。イアが居る世界は何時も何処でも僕の理想だったよ」
ナイフを持った手が震える。それでも、その手に力を込めた。
*
誰かの全力疾走の後のような呼吸の音がする。赤く黒い液体が地面にゆっくりと広がっていった。
混濁した思考が少しずつ清明になっていく。この呼吸の音は自分の物。そして手には鮮血の滴るナイフが握られていた。
ー 貴方は理解している、この物語を終える方法を。
*
「ずっと初めから、僕は君のこと……」*1
「……」
既にこと切れたはずの人物と目が合った。彼は何処か笑っているように見えた。
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06.終焉
目が覚めるとそこは記憶にある場所だった。本はあの時と同じように窓からの風によりページを捲り、外には雨が降っている。ただ一つ違うのはサクラがこの世界に居ないこと。
それでも確かにその存在を真実とさせるのは、首元に僅かの重みを感じさせるペンダントの存在。そして花束がベッドの下へ落ちている。
カレンダーは5月をさしており、明日も休みである。貴方は何をするだろうか。
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(花束がない場合 花束の描写は無し)
★何もしなかった場合、または情報やアイテムが足りていない場合
過ごすうちにあれは夢だったのだと思うだろう。しかし、たまに思い出すのだ。知らない誰かに愛されていた記憶を。
END1:華胥の国
「花束を持って、昼寝...…」
記憶を頼りに花束を抱いて寝ると、心地良い微睡から目が覚める。不快な音も、爆発音もしない。ここがベッドの上でないことは確かだった。
機械の中で身体に絡まるコード解いて、固く閉じる扉を力いっぱい開く。そこには時間が経ったのか、あの時のような人工的な物はなく、ただ手つかずの自然が広がっていた。
「死者復活を行なう場合、あの世とこの世の境目にて生きかえしたい者の身体の一部と花束を備える必要がある…...」
一番光の指す場所、桜の木の下で彼はまるで寝ているように目を閉じている。人では無いからか、身体の何処も欠けてはいない。
「寝ているサクラに花束をそえたら良いのかな……?」
ここ一帯は二つの世界を繋ぐ場所。覚悟を決めて近くに花束を置いたとき、熱を持つことのなかったペンダントが熱を持った。
(ー イア、御誕生日おめでとう。イアを守ってくれますようにって、魔よけのおまじないをかけたんだ)
眩い光を放ってペンダントは割れ、粉々になって消える。
本来、蘇らせたときに悪魔の呪いで記憶が無くなり、死も近づいてくるだろう。しかし、そうならないのはペンダントが守ってくれたから。
「あれ……」
サクラの呪いが解けたのだろう、身体が初めて会った雨の日と同じ姿になる。
「おはよう.…..?」
そこで思い出す、自分が目が覚めた時、記憶が無かったこと。もしかしたら同じように記憶が無いかもしれない。
「……イア、おはよう」
「!」でも、不思議とサクラはイアを忘れることは無かった。
「……出逢ってくれて、あの日俺に話しかけてくれて……ありがとう」
「私もサクラと出逢えてよかったよ。ありがとう」
「……この命が終わるまで、イアが幸せになることが俺の幸せ。もしイアが望むなら、この場所は永遠の命だし、元の世界で二人で人間として暮らすのも良い」
「皆でここに暮らすのは出来るかな……? だけど、この場所にくる方法を知らないとダメだよね」
「皆っていうのは人類なら気が遠くなる話だな」
「ただ、イアの大切な人だけなら花束を渡して、来て貰うことが出来ると思う」
「そうだよね、この場所を人類に知ってもらうのは難しいし.…..」
「もし皆を望むなら、どれくらいかかるか分からないけど、片っ端から寿命無限の俺が連れてくるという手もある……」
「あ、それなら無責任な提案だけど、一応現実にもある花だし、ツイッターで布教だけしようかな。全財産でいいねやRTを買収してトレンドにのせる。そして興味を持った人たちが布教してくれればいいかな。個人の自由も優先したいから」
「イアらしいね」
「僕がこの世界でイアと出会ってすぐ、イアは二人でいたから楽しいんだよって言ったけど。本当に楽しかったな」
「本当に。この世界で2人で冒険して毎日楽しかった!」二人で沢山笑って、これからのことをお話しする。
「サクラ、これからもよろしくね」
「よろしく……夢みたいだ。……初めて会った時からずっと、イアを愛してたよ」*1
「!! 実は私も......一目ぼれしてたんだ。嬉しい」▶ KP情報(ここをクリック ※ネタバレ)
*1
死神は優しく話してくれたPLを初めから好きになっている。御察しの通り、それまでは好きとか大切とか愛するという感情を知らない。ので、PLに伝えるときは自覚するまで違うニュアンスにすること。(嬉しい、安心するなど)
このリンクの飛び先(05.真相の下部、開いてないと飛べない)で言えなかった気持ちをここで伝えられたというラスト。
これは、最早ニュアンスが伝わるか分からないけれど、サクラはその気持ちを知れたことが嬉しくて、この大切な気持ちを、過去の自分に教えることすら少し嫉妬を覚えてしまうくらいPLのことが大好き。
なので過去の自分に言わないで欲しかったのは、閉じ込めてしまうことではなく、この愛情のことだった。
また、言葉も、PLから教えてもらった言葉で伝える。今回は愛情と教えてもらったので愛してると言う。好きと教えてもらったなら好きと言う。
サクラもまた嬉しそうに笑った。それから、ゆっくりと噂は広がっていき、華胥の国が第二の人類の都となるだろう。
イアとサクラは理想の国で永久に幸せに暮らしましたとさ。
END2:永遠の思い出
▶ KP情報(ここをクリック ※ネタバレ)
今回PLがSJの場合、サクラの最終結果が同じSJか相性の良いNT、あるいは愛情値6以上だと、想いがとても強いため記憶が残る。
妹の最終結果、サクラは今回ESFJだった。愛情+7、疑心+0
サクラがNF、SP、あるいは疑心が高い場合はPLと同じように記憶が失われ、END3:記憶になる
*
「……名前は?」
それは初めて出会った時と同じように、無表情の彼だった。初めて出会った雨の日も、あの逃避行も。色んな記憶が無くなってしまったのだろう。
PLの反応に応じて
「イア、そんな顔しないで。……苦しい。ここは華胥の国だ、確か15:00にパレードがある。イアには、笑っていて欲しいんだ」
その言葉に記憶が無くても、きっと何時かは同じ関係に戻れるだろうと感じる。
手を引かれる。その手は暖かかった。
END3:記憶
感想
▶ 妹:感想(ここをクリック ※ネタバレ)
価値観を語る&育成系TRPG面白かった!
途中までサクラ君を育成している気持ちはなかったから、もっと社会での立ち回りより、サクラ君自身から沸き起こる気持ちを尊重してあげたいと思ったな。いい経験だった。素敵なところ①
死神との絆が深まるシーンの文章は少ないけれど、これまで何も知らなかったサクラと絆を深めて来たから、同じように仲良くなったんだろうなと納得感があった。その構造が素敵。一緒に旅を続けるうちに、絆が結ばれていく自然さもよかった。素敵なところ②
世界が広い。想像したことは、理にかなっていないもの以外全部出来たから窮屈じゃなかった。異世界と現代を行き来したり、四季があったり、町によって世界観が全然違うのも広がりを感じた。素敵なところ③
スタートから終わりまで物語が練られている。大きなシーン転換や様々な出来事があるから、だれることがなく最後まで物語に惹きこまれた。トゥルーエンドの難易度も丁度いい。感動したところ①
読み返したときに気づいたんだけど、死神の寿命が尽きる日に渡したプレゼントが魔除けの指輪だったのが、これから自分はいなくなってもPLを守りたい気持ちが温かで......泣いた。感動したところ②
イアとサクラは理想の国で永久に幸せに暮らしましたとさ。
種族の違い、悪魔の呪い、元々の寿命で別たれた二人の最高ハッピーエンド。▶ 姉:感想(ここをクリック ※ネタバレ)
妹と遊んで姉目線
春眠
初めからフレンドリーなイアちゃん可愛い。
この物語の一番好きなシーンが、イアちゃんが好奇心旺盛に色んな所を見て楽しむところ。そしてご飯作ってくれるところも可愛い。
ココフォリアでは表情がコロコロ変わるので、サクラ君もイアちゃんを見ていて楽しいだろうなと思った。
仲夏
えっえ、どうしよう! からの「私をまた運んで遠くに連れてって……!」という怒りをクラスメイトにぶつけるでも、サクラ君を諭すでもなく、サクラ君のことを一番に考えた0秒判断の脳筋さが可愛い。物理的に離れる……そんな方法考えても無かったぜ。
妹は作っている私よりもサクラ君のことを良く考えていて、どうしたらサクラ君のためになるのか真剣に考えてくれる所嬉しかった……。
夕日の中、一生懸命考えるイアちゃんを見ながら、サクラ君はきっと愛情を感じていたんだろうな……。
そして寿命の差を話すイアちゃんに(イアちゃんが望むのなら永遠にしたい……)とサクラ君は思っただろうな……。
秋愁
機械暴走したら怖くない? というシーンにて、サクラ君への信頼……。
イアちゃんがマリア様シーン。
また、ほぼ空想で作っているから分かり辛いだろうなと思う、とんでも設定でもしっかり汲み取ってくれて嬉しかった……。
厳冬
ここの戦闘シーン、サクラ君が死んじゃわないか心配する妹が可愛くて……。コア壊れなきゃ死なんやろ! じゃなくて、しっかり手当もしてくれる。
震えながら血を触るイアちゃん、心から心配してくれるイアちゃんのことをサクラ君が好きにならないはずがない。(暴走するかどうかのシーンでもあるのだけど、その優しさや温かさが嬉しくてサクラ君は優し気な雰囲気になる)
植物園から安全地へ行く途中、サクラ君はイアちゃんをいかに無事に帰すかだけなので、思考がシンプルなのだけど、イアちゃんはどうしたら二人で生きられるのか、実は1時間くらい色んな案を考えていて、危険で命の終わりの近いシーンなのだけど、沢山考えてくれるのが嬉しくも可愛くてサクラ君は笑ってしまう。
安全地に行くとイアちゃんの望んでいないであろう、サクラ君の死のシーンが来ちゃうから、本当は行くかどうか悩んでいたのだけど、今までのイアちゃんの動きや考え方から(きっと記憶を取り戻した先で、イアちゃんなら何とかするのでは)とサクラ君は心の何処かで感じてそうと思ったし、信頼してそうだなと思ったので二人には行ってもらった。
真相
「なんで、人は離れると悲しいんだと思う?」の返答の間合い。
押し黙る、その空気感から、本当に大切なんや……って伝わってきて……;;初めてTRPGを作ったけれど、きっともうこんな素敵な気持ちは味わえないな……と感じたシーン。
終焉
発想力豊かなイアちゃんらしい終わり方。
妹を想定して作ったけれど、やっぱりサクラ君は初めて出逢った時からイアちゃんのことを好きになるよね……と思わせるRPだった。
嬉しかったこと
・長編映画並みの感想や賞賛をくれる。もちろん、長編映画を観た並みのじゃなくて、長編映画並みの感想。どういうことか……分かるか……?
・「技術的に上手いか下手か」ではなく、「自分で愛せるかどうか」
恐らく遊んだのが妹じゃなければ愛せなかったと思う。書いた文が稚拙だ、ここが矛盾してる、とかじゃなくて、初手から一緒に楽しもうとしてくれて、作品を大切にしてくれたから愛せたな……。とあるクリエイターの名言なんですけど
— RGBこーぼー (@workshoprgb) 2019年11月13日
「クリエイターは、自分の作品への主観的な評価を「技術的に上手いか下手か」ではなく、
「自分で愛せるかどうか」にすると良い。」
という言葉がありまして、とても良い言葉だなぁと思いました。・雨の中のお散歩で(あんまり自作TRPG、楽しみじゃないのかな……)と思っていたのだけど、体調が悪かっただけで「遊ぶぞ!」ってなった時、しっかりと推奨技能を取ってくれていて、色んな楽しみ方はあれど(最後までシナリオを完遂して、楽しもうとしてる!)というのが伝わって来て嬉しかったし、蓋を開けてみれば、大人から子供まで沢山の表情差分を作って来てくれてたのもウレシカッタ。
・上手い表現が難しいのだけど、初心者KPに優しい模範的さだった……。作った食事の前で踊って醤油かけて床にぶちまけるんじゃなくて、美味しいって言いながら丁寧に食べてくれる感じ……。空想で遊ぶよ! っていうシーンではしっかりと空想で楽しんでくれて、初めて出会うキャラに対して不信に思っても良い所、受け容れるので死神の感情移入もしやすい。
・音楽のタイミング褒めてくれたのも嬉しかった。きっと昔から一緒に同じものを見て楽しんでいるから、この時かけたい曲もタイミングも一緒なんだね……はい、キッス。
・期待以上と言ってくれたのも嬉しかった……。期待されるの苦手だけど、それくらい期待に応えたいと思っているから、その言葉がとっても嬉しかったんや……。
華胥の国に遊ぶ 次回に向けてのメモ
・幸せとは何かについての価値観聞きたかったな……。
・まだ二人で冒険してみたい所沢山あるな……。